バブみ道日丿宮組

お題:10の狐 制限時間:15分

 契約によって狐は縛られていた。

 それは主を忘れないように愛するための絆の証。

 10個の封印によって狐は少女になった。本来少女は化ける能力を持っていた。しかし主の側で暮らすという夢の実現のために力を制限せざるを得なかった。

 制限によって狐は老いを手に入れた。そして異端を捨てた。

 平和になった世の中は異端を嫌う。それも獣人となれば、迫害の象徴だ。狐の化け術では数ヶ月は持っても数年は持たない。

 人は成長もとい老いる。その多少の変化を術でコントロールは不可能。若いか、古いか。その違いでしか術はできない。シワの1つすらきちんと表現できないというのはある種の神がかり、いや動物の生命力の凄さがそこにある。

 術を細かくコントロールでないのは腕利きの術士でも同じ。呼吸をするように敵を破壊することとは違うのだ。

「これでどうでしょうか」

 白いワンピースを羽織った少女はその場で一回転する。

「うん、可愛らしいよ」

 主の言葉できゅんと少女は頬を赤らめる。そこには狐というおかしさはなく、人間らしさというのが現れてた。

「母さんも喜んでくれる」

「はい、どこまでもついてきます」

「最後にこれを渡しておく」

「これは?」

 主から手渡されたのはペンダント。Hの形をしたアクセサリーの中心点に青い宝石がある。それは能力を制限された少女であっても微かに力を感じるものだ。

「万が一何かあった時に封印を解除できるようにした」

 これはその道具だと主は笑う。

「一緒にいると言ったではありませんか。もしもの時なぞ起こりえませぬ」

「だからこその万が一だ」

 優しく主は少女を撫でる。

「10の封印によってお前はこれから何かと不便を感じる。それらを経験して嫌だと感じることもあるだろう。ペンダントは耐えきれなくなったときにも使える」

「主さま。どこにも行かないといったはずです」

 そうだなと主は頷き、そして少女を口を奪う。

「なら、プレゼントだと思ってくれ。なかなかいい素材だしな」

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バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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