繋がる先は...。

アリエッティ

第1話 繋がった先は...

 「あ、そういえば健二の奴新しい動画上げたって言ってたな。..観てやるか」

 友人が最近動画配信を始めた。再生数は限りなく低いが、一応近しい付き合いで視聴者の一人となっている。


「お、上げてるあげてる。

どれどれ..部屋で魚釣りしてみた?」

再生数は3回とやはり壊滅的、内容も下らなく数秒でつまらないだろうと察する。しかしそれよりも気になったのは、いつもと違う耳周りの違和感だった。


「音が聞こえない..」

イヤホンは挿している、最近買い換えたばかりなので壊れている訳でも無さそうだけだ。


「…別の所に繋がってる?」

ここは古いアパートだ。壁も薄く、耳を当てると隣人の生活音も多少聞こえる程だ。


「どこに繋がってるんだ?」

耳を澄ますと、微かに物音が聞こえる。


『グチュ、グチュグチュ..ザー...』


「うっ..!」

思わず気分が悪くなる。

何かをほじくり混ぜる音、後半はシャワーのような水が流れる音が響く。


「なんだってんだよ..。」

イヤホンをしっかりと当て再度耳を澄ますと新たにまた音が聞こえる。


『ヒュッ..ウィーン!

ガ..ガガガガガガ...ウィーン!』


「…機械、何か投げたか?」

ロープか何かを投げ機械が振動する音。工場の作業音かなにかだろうか。


「何が起こってるんだ..」


『はい、という訳で!』「うおっ..!」

突如接続が動画に戻った。別の場所に気を取られ、内容はもうほぼ終わりに近付いていた。


「..んだよ急に、まぁいいか。....ん?」

おかしい、動画の音としては距離が遠い。

回線が薄いのか、違和感を感じながら取り敢えず動画を見る。


『もし面白いかったら、チャンネル登録よろしくお願いしま〜す!』


「終わっちまったよ。

..まぁいいや、感想でも言ってやるか」

友人に動画の感想をスマホで書き、送る。


『ピロン!』「..ん?」

送った数秒後に、タイミングよく電子音が鳴った。おそらく隣の部屋からだ。電子音が鳴って直ぐ、『既読』の文字が。


「…は?」

直ぐに友人に電話を掛けた。すると隣の部屋から電子音が鳴り響く。


「なんでだよ..なんで隣の部屋からっ⁉︎」

声を上げると、電子音が止まった。


「……。」


『聞いててくれれてた?

..〝部屋で魚釣りしてみた〟面白いでしょ。』


「......ひっ..!」


『チャンネル登録、お願いしま〜す..』

ここで、全ての音が消えた。


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