異世界で、魔法について学ぶ

「明日は魔法選定の日ですね、アル様」


 放課後の教室でルールーが謎の呪文を唱えた。


 魔法選定の日?

 うん?

 何それ?


「あはは。アルはバカだな! 魔法選定も知らないのか」


 何も答えないでいたら、僕っ娘のスカーレットに馬鹿にされた。

 イラっとしたのでミニスカートをパカパカめくってやった。

 だが、しかし。

 『涼しいね! アルもっともっと!』とポンコツが喜んでしまった。


「アル様!」


 ルールーに睨まれたのでビクっとして、少し後ずさった。

 スカーレットが『アル、怒られてるよw』と俺を煽ったが、そんな僕っ娘が気にならないくるらい、ルールーが、怖い。


「ゴメンなさい」

「いえ、怒ってはいません。けれど…」


 『けれど…』の『…』と鋭い目線が怖い。

 至急話題を変えなければ。

 

「ま、魔法選定って何だよ、スカー?」

「ふふふ。まさかアルに何かを教える日が来るとは。ふふふ。この私、スカーレット先生がアル君に魔法選定を教えてあげよう!」


 あー。

 なんかイラっと来るー。

 スカートまくってやろうか。


 うっ。

 察しの良いルールーに睨まれたので、ここはおとなしくしていよう。

 実際に大人だし。


 俺が大人しくしているとスカーレットが調子に乗り、得意気に口を開いた。


「魔法選定の日とは、魔法が使えるようになる日なのさ!」

「えっ!? そうなの!?」

「スカーレット、全然違うから! アル様に変な事を教えないでよ!」


 えっ?

 何?

 結局何なの?


 困惑する俺を見かねて、ルールーがしょうがないといった感じで教えてくれた。

 ルールーの説明によると魔法選定とは、最も才能のある魔法属性を見出だす為のテスト。

 選定の日、国中の五歳児が白い花を握り『色が変われ!』と念じると、才能に応じて花びらの色が変わるそうだ。

 火(赤)・水(青)・土(茶)・風(緑)といった感じ。


 実際、多くの子供は花びらに変化はないのだが、だからと言って一生魔法が使えないという事ではない。

 蝋燭くらいの火を出したり、コップの底に貯まるくらいの水を出す程度の四属性魔法は、この国で生活魔法と呼ばれ、修練すれば誰でも習得出来る。


 では何故選定の日を行うのか。

 それは、国策として一部の才能有る魔法使いを見出だす為だ。

 後に大魔法師と言われる人達は、花の色が真っ赤に染まった後、造花のように固まったり、緑色の液体になったりと、五歳児にして様々な逸話を作ったらしい。


「アル様は黒魔法ですよね…」


 ルールーが声を落として真剣な顔で聞いてきた。

 先日の転移者との一件でバレたのだろう。

 黒魔法とは知らなかったが、四次元魔法は黒い色だし、特に驚きは無いのだが。


「多分、そうかな。黒魔法だとまずいのかな?」

「えーと、うーん…」


 聡明なルールーが押し黙った。

 不安になるな。


「良い悪いで判断すると、アル様にとっては悪いかと」

「俺にとっては?」

「王位継承に興味は無いのですよね?」


 えっと。

 よく分からん。


 黒魔法と王位継承の関係が分からず少し考えていると、それを察したルールーが補則説明してくれた。


「魔力の高い者や、黒魔法、白魔法という特殊魔法を持つ王族の王位継承順位は、跳ね上がります。王国では未だに、王とは最も優秀な魔法使いがなるべきだと考える貴族が多い為です」


 なるほど。

 ルールーの説明で今までの出来事が色々と納得できた。


 第一王子はおそらく魔法の才能が無いので、お母様があれこれと外堀を埋めていたのだ。

 そして、俺みたいな魔法の才能が有るかもしれない王子なんて、お母様を含めた他の王族にしたら、継承順位を脅かす(おびやかす)厄介者でしかない。

 色々と嫌がらせしてきたのは、魔法の才能があっても、王位を諦めるように仕向けていた為なのか。

 この前、次元魔法を大勢の生徒の前で使ったのは、まずかったな。


「うーん。困った。この前の件で黒魔法なのがバレたかな?」

「私もそうですが、魔法に精通している生徒なら分かったと思います」

「そうなんだ。失敗してしまったな…」


落胆する俺をルールーが見つめる。


「やはり、そうなのですね…」


 ルールーが寂しそうにつぶやいた。

 しかし、この時の俺は、自分の失敗にばかり気が向いていて、彼女の気持ちには気づかなかったのだった。

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次元魔法の物語~王子転生したけど暗殺されそうになったので国作りした~ 斉藤一 @saitou69

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