第49話 ニューチューブ撮影
ニューチューブ撮影当日、俺と美久、翔と早見ちゃんはタケシタ通りへとやって来ていた。
今回の企画が、美久から学ぶ今時スポットで10人の人にチャンネル登録をして貰えるまで帰れませんと言うもの。
1本目の企画としてはかなりハードだと思うが、これぐらいしないとチャンネルが伸びないと言うのも事実としてある。
最初のインパクトでチャンネルに注目を集めて、俺たちの存在を認知して貰おうと言うわけだ。
「せんぱいとみくちそ、この辺りからオープニング撮っていきましょうか?」
「結構人いるなぁ。なんかめちゃくちゃ恥ずかしいんだが」
「時期になれますよ。まあミクもこれまでは部屋の中でしか撮影した事ないので、あまり偉そうな事は言えないんですけどね」
「おい美久、お前めちゃくちゃ足震えてねえか?」
「あひゃ!これは武者震いってやつですね!」
「嘘つけ!!明かに半端なく緊張してるだろ」
美久の緊張が俺にまで伝染して、周囲への恥ずかしさと緊張で二人揃って撮影どころではない状態だった。
俺ともあろう人間がこれしきの事で動けなくなるとは、情けない。
「ちょっとちょっとそこのお二人さん、何緊張で固まってるのさ?周りの人達なんてこう言う場面には慣れてるから特に俺らの事なんて気にも止めてないよ。タケシタ通りはよくテレビのロケでも使われてるし、ニューチューバーも来てるから気にせず撮影して問題ないと思うよ」
「……翔さん」
「……翔」
翔からのナイスな掛け声により、俺達の緊張がかなり解けた。
まじで感謝だぜ、サンキュー翔!!
そうだ、ここはたくさんの若者が集まるトウキョウのメイン通り。
そんな場所なんだから俺達みたいに撮影している奴はわんさか居るはず。
「美久、やれるか?」
「はい!いつでも大丈夫です!」
「早見ちゃん、大丈夫だ」
「は〜い!じゃあ翔先輩、カメラお願いします」
「了解」
俺の合図で撮影がスタートした。
オープニングは台本通り順調に進んでいき、俺も思ってた以上に喋れているはずだったのだが……。
「ちょっと止めま〜す」
「……ですね」
「……だね」
「ん?どっか変な箇所でもあったか?」
いい流れだと思っていたのだが、俺以外の全員が何かに引っかかっていたようだ。
一体何なんだ?
「せんぱい、どうしてずっと気持ち悪い笑顔しているんですか?」
「……気持ち悪い?」
「神谷さん、その笑顔不気味です」
「……不気味?」
「悟、その顔はちょっとやばいかも」
「……やばい?」
心愛からのアドバイス通り、最高な笑顔で撮影に臨んだはず。
なのになぜ、全員からこれほどまで評判が悪いのだろうか。
「そんなに俺の笑顔は変か?」
「かなり気持ち悪いですね。作り笑顔ってバレバレですし、それはやめた方がいいかもです」
「神谷さん……ドンマイです」
今週はかなり頑張って笑顔の練習したんだけどな。
何度も洗面台にある鏡で自分の笑顔を見て、芸能人の笑顔と比べながら微調整を繰り返した。
それなのにこの有様だ。
全く意味のない努力を俺はしてたらしい。
「さあせんぱい、みくちそ、撮影を再開しましょう」
「ラジャーです!ミクはいつでも大丈夫です!」
「俺もいいぞ。次は普通にやってみる」
撮影はすぐに再開される事となった。
最初から撮り直すと言う事なので、かなり時間的に厳しい状況だ。
俺のせいで本当にすまない。
◇◇◇
「では一旦ここで止めま〜す」
早見ちゃんからの合図により、撮影は一旦終了した。
無事にオープニングは撮り終えれたみたいだな。
「神谷さんなかなか良かったですよ!自己紹介とか親父ギャグって感じでスベリサラリーマンキャラが上手く生きてました!」
「俺はいつからその変わったキャラ設定がされてたんだ?」
「え!違ったんですか?」
「どう見ても違うだろ」
ミクはずっと、俺の事をスベリサラリーマンキャラだと思っていたらしい。
まあ、あながち間違ってはないのか?俺のギャグで笑ったことのある人間は多分一人もいない。
これからも誰かを笑わせられる自信なんてないしな。
「オープニングはかなりいい感じに撮れたので、次は歩いてる人にインタビューをしてチャンネル登録をしてもらって来てください」
「今更ながら、10人にチャンネル登録してもらうって難易度高すぎねえかな」
「大丈夫ですよ。意外と何とかなるもんです」
「美久、また足が震えているぞ」
「あひゃ!またまた武者震いですかね」
「バレバレな嘘はやめろ」
こうしてビビりながらも、無事にオープニングを撮り終える事ができた。
サラリーマンが女子高生を救ったら、女子高生がサラリーマンのファンになってしまった。人生まだまだ捨てたもんじゃない。 チョコズキ @shirousagi406
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