第ex話「最後の一言はマジメに」



 明かりを落とした部屋の中で、男はPCのモニタを見ながら呟いた。広いとは言えないが、一人では寂しく感じるそれなりの部屋に男は一人でいた。


「……やはり、貴方は間違いなく本物だ。私にはわかる。本物は、本物としかわかり合えないのだからな」


 男は気障ったらしく、掛けているメガネをくいと持ち上げた。そのレンズに薄く反射するモニタの光。それにはある戦いの記録が映し出されていた。

 四人の選ばれし少女と、そしてそれに敵対する組織。ひとつの強化服を巡って繰り広げられた、悲しくも儚い戦闘記録。



 ──しかし。それは姿ではない。

 外部からはを施された、が繰り広げたガチンコデュエルだったのだ。

 それが簡単に露見しないよう、外部のデュエリスト(ハイパー有能女史とスーパーガチイケメン)二人を召喚するという用意周到ぶり。

 素晴らしい外部デュエリストたちには感謝の意しかないが、これは詰まるところ、変態二人が自分たちの至高の双丘(あえて双丘と呼称させていただく)を文字で描き合うという、並の変態なら裸足で逃げ出すであろう狂気の祭典カーニヴァルだったのである。


 そして──、PCの前でニヤリと笑うこの男こそ。その変態二人の内の片割れであったのだ。


「ククク……やはり貴方は! 最後の最後でとんだ大技を決めてきた! てっきり切り札は【チクビーム】だと確信していた! それがなんだ、ミルキィ・スプラッシュだと? あり得ん、あり得んのだよ! その発想、もはや人外の領域! ククク……昂る、昂るぞ! 間違いなく貴方こそ私の終生のライバル! フゥーハハハ!」


 何がおかしいのか、いや最早この男の頭の中がおかしいに違いないのであるが、男は恍惚の表情を浮かべながら笑っている。一言でいうと、危ない。二言でいうと、死んだらいい。男は今回の一件でポイント・オブ・ノー・リターンを遥か後方へと置き去りにし、結局地球を一周してまたそれを超えてしまったのであるが、しかし後悔の気持ちなど微塵も持ち合わせていなかった。

 そう。男の顔は、見たことがないほど──、それは晴れやかだったのだ。


「……この広い電子の海で、私は貴方という光り輝く星を見つけた。貴方が太陽ならば、私は月となろう。貴方が龍であれば、私は虎となろう! そして貴方が一方の低い丘を掴むのならば! 私はもう一方の──」


 男はそこで感極まり、この上ない笑顔で嬉死した。



《終劇》



 ※【嬉死–うれ・し】

 《名・ス自》嬉しすぎて死ぬこと。そこに後悔の念はない。また嬉死した遺体は朽ちることなく永遠に光り輝き、その遺体は性人として扱われる。「薮坂は理想の双丘を目の前に──した。」





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 こんばんは。ガチ変……いえ薮坂です。この度はゆうすけさんと始めたピンポンリレー小説を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。いや、本当にありがとうございました。

 みなさんに読んでいただけたからこそ、このお話は「変態の変態による変態のための自己(の性癖)紹介」にはならず、一応リレー小説の体を保てたと言っても過言ではありません。

 ほんとうです、嘘じゃありません。特にちえさんとlagerさん、この狂宴にご参加いただきありがとうございました。お二人は何か大切なものを犠牲にしてしまったのではなかろうか、と少し心配しています。



 さて。今回は本当に何となく、深く考えもしないでゆうすけさんのお誘いに乗ったのですが、私もこのリレーがここまでお互いの「好き」を固めて殴り合う祭になるなんて思ってもいませんでした。

 こんな変態バトルになるとも思いませんでしたし、ここまで長くなるとは思ってもみなかったのです。これ二人で五万字越えですよ、五万字。致死量の濃度の変態話をここまで書いたのは初ですし、これはしばらく毒が抜けない気がしますよほんと。


 そしてゆうすけさんはやはり強かった。やっぱりすげぇ人です。いやまじで。こういうバカ話にも全力でその筆力を遺憾なく発揮してくれますし、やっぱりノリが凄いんですよ! 同好の士(深い意味で)というのもありますけど、ゆうすけさんは器が琵琶湖並みなんです。だからこっちも好き勝手書けて、本当に楽しかったです。ありがとうございました!


 あと付け加えておくとですね、普段はこんなお話ばかり書いてる訳ではないのですよ! 確かにゆうすけさんの最近のお話には幼女……いや違う、これ以上いうとアレな人にしか思えないですけど、至ってマジメなお話も素晴らしいのです!

 「一夜のキリトリセン」とか感涙モノですし、「みーくんは今日も夕陽を眺める」なんてほんと色々考えさせられる名作なのですよ。

 とにかくまぁ、ゆうすけさんはこんなテイストだけじゃあないんだぜ! と言いたいのです。なので未読の方は読んでみて下さいね♡



 さてさてあとがきも長くなってきましたが、終わってみれば不思議な寂しさといいますか、寂寥感といいますか、胸に穴があくというか、あらゆる胸よ平らになれと言いますか、とにかく不思議な感覚です。でも間違いなく言えるのは、楽しかった! ということです!



 いろいろお目汚しなエピソードもありましたが、少しでも楽しんでもらえれば、作者としてそれ以上の喜びはありません。次はピンポンではなく、ノープランでもなく、予めカチッとゴールを決めたリレーをフルメンバーでやりましょう。アフィシオンの再来くらいの難易度がいいですよね。その時まで頑張って生きたいと思います。


 重ねてになりますが、ここまでお付き合い頂いた読者のみなさんに大きな感謝を。そして参加していただいたちえさんとlagerさんに深い感謝を。

 最後に親愛なるバディのゆうすけさんに、アツい感謝を。


 しばらくマジメになれそうにないですが、最後はやっぱりマジメな一言で締めたいと思います。








 ──ワセリンと歯ブラシは永久に不滅です!





 2021年

 とても暑い熱帯夜に


 薮坂




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デス・ジャッジメント・クリアランス ~危険な三姉妹の物語 薮坂 @yabusaka

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