第4話

「もうこの辺でいいんじゃないか?」


そう、この辺りはさっきまでの焼け野原から1時間ほど歩いた場所だ。

森に囲まれた綺麗な湖が特徴的だが、人が周りにいないことから、ここでいいと判断した。

おそらく、ここにいた人たちはさっきの爆破音で移動したのだろう…。


「そうね、この辺なら落ち着いて話せそうだし。…バナナ食べる?」


なぜバナナ…。まぁ、この体は最低限のエネルギーしかないらしいから頂くが。


「いただきます。」


「どうぞ。私もお腹減っちゃったから何か食べようかしらー。」


といいながら、アルカがぶつぶつと何か唱えていると、ボンッとお皿に乗ったざる蕎麦が出てきた。


なんで蕎麦?さっきからアルカの選ぶ食べ物が何か気になる。そうこうしているうちに、2人とも食事をすることにした。



ザァーーー



他に人がいないからか、風が草木を通り過ぎる音が聞こえて来る。

異世界に来てから短時間のうちに色々とあって驚いたが、この綺麗な景色を見ていると自然と気持ちが落ち着くのが分かる。


「アルカ。見てみろよ。ウサギが水を飲みに来ているよ。5羽もいてかわいいな~。」


「えぇ、本当ね。かわいらし…」



ザバァァァ、ガブ



ゴクン、


「……」


「……」



…湖から出てきた体長5メートルほどのワニにウサギは食べられました…。


「…移動しよっか…」


「…そうね。ここにはもう用事はないわ…」


そういって移動しようと周りを見てみると、周囲にはワニが集まっている。


「「いやぁーーー!」」


「おんどりゃ!『アイスエリア』」


ピシッ パキッ


「……アルカ?寒いんだけど。」


「…てへっ?」


湖やワニもろとも周りが氷漬けになってしまったのだ。

…もう、アルカに期待するのはダメだと理解した僕だった。



「まぁ、危険も無くなったしここでいいか。」


「人が来る前にさっさと要件説明するわね。あなたは向こうの世界で死んだの。

こっちの世界は、向こうの世界のように医療技術や産業革命が起こっておらず、人がよく死ぬの。

だから別の世界から人を補充することにしました。あなたが1人目ね。

あなたの例が上手くいけば、今後はもっと人を呼ぼうと思っています。 以上です。納得した?」


「納得できるか!もっとわかりやすく説明しようよ!僕を読んだ理由は何となく分かったよ?だったら僕はこっちの世界で何をしたらいいの?自由に生活していい?」


「ダメに決まってるじゃない!

あなたにはダンジョン経営してもらいます!」


こいつ…ダメに決まってるとか何とか。

当たり前のこと聞かないでよ的な雰囲気で話を進められても僕は何もわからないんだよ⁈


「…一旦落ち着こう。アルカ。

僕は召喚されたわけだけど、この世界で君の奴隷にでもなるのかなぁ?」


「…そうね、一旦落ち着きましょ。

コウタくん、あなたは別に奴隷になるわけじゃないわ。ただね、あなたをいきなり「さぁ、自由に生きてごらん!」って放り出してもあなたの為にはならないと思うの。でしょ?見ず知らずの世界にいきなり放置されたらきっと生きていけないわよ。現実は厳しいの。あなたが考えるように異世界でも何とかなると思ったら大間違いなんだから。」


せ、正論だ。僕はこの世界で生きる術を持っていない。さっきのワニとか奴隷商人とかを知ってしまってはおそらく生きていけないと確信できる。


「確かに…。確かに、いきなりは無理だね。だけど、それとダンジョン経営はどう関係するんだ?」


「実はね…。この世界は、ダンジョンを通じて世界中に魔力を循環させているんだけど、ダンジョン経営は冒険者や国に狙われるからって魔物たちには不人気なの。それに、そんな危険な仕事の割に神からのサポートが不十分だということでますます人気がないの。

だからといって、ダンジョン経営しなければ世界中に魔力が循環せず、この世界は最期は滅んでしまうの。だから、ダンジョン経営者を探していたの。そんな時に、あなたを向こうの世界の神から融通してもらったの。」


なるほど、

渡に船とは僕のことだったのか…。

まぁ、この世界で神の手助けなしで生きていけるほど僕は優れているわけではないからな……よし!



「アルカ!分かったよ。

この世界で別にやることもないからダンジョン経営やってみるよ。」


「コウタ!ありがとう!」



これが、僕がダンジョン経営することになった一部始終でした。

この時の僕は、ダンジョン経営がどれだけ大変なのか知る由もなかった。

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ダンジョン経営って難しいですね。 しぇからしか @hiroki0726

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