第3話

ドサドサドサ


「…」


起きてることはバレない方がいいと思い、

ドサっと箱が降ろされた衝撃を無言で耐える。さっき、テスターは奴隷が起きることを問題視していた。おそらく、ここで起きていることをバレるのはデメリットしかないだろう。ここは静かに過ごそう。


「静かに!いい?私が今話しかけていることには頭の中で返事をしてちょうだい!」


「っ⁈」


おもわず声を上げてしまいそうになる。


「あなたはコウタくんでしょ?

私は、あなたをこの世界ジュニシスに召喚した神アルカよ。

あなたの肉体は外傷を負い、生命を宿すには欠損が激しかったの。だから生命だけをこちらに召喚したの。いい?あなたの体の元の持ち主は衰弱死で死んでしまったの。

だから、あなたには速やかにエネルギーを補給してもらいたいのだけど…

私も箱に閉じ込められちゃって…」


「……あの、なぜ私を神様の住まいにでも直接召喚してくださらなかったのですか?その方が、こんな目に遭わずに済んだのでは?」


そうなのだ、異世界転生といえば、神様しかいない空間に直接召喚されて、そこから物語が始まるものではないのか?


「アルカでいいわよ。堅苦しいの苦手だから。それよりね、神界に神以外を召喚することは基本的に出来ないの。そんなことすれば、神界規定に反したとして、私が処罰されるんだから!だからこうしてわざわざ下界に降りてきて、あなたの肉体探しや召喚理由の説明を行なっているの!わかった?」


「わかりました。」


てか、神様が奴隷商人に捕まるっておかしくない?神様なのに…神様なのに…


「伝わっているわよ。頭の中で考えたことは伝わるって言ったわよね?」


やべっ、忘れてた…。

あまりにも普通に頭の中で会話してたから…


「はぁ、もういいわ。とにかく!私もあなたもここから逃げることが先決なの。説明は後よ!

奴隷商人はここに奴隷を集めてどこかの貴族に労働奴隷として売るつもりらしいけれど…

ここにある6つの箱には生きている奴隷はもうあなたと私以外いないのに気付いていないようね…。こんな雑な扱いをするなんて本当に奴隷商人なのかしら!冥界行き決定ね!」


「あのさアルカ、僕たちこれからどうするんだ?」


「あら、随分とくだけた口調になったじゃない。その方がいいわ。これからの心配なんて必要ないわ!見てなさい!私の魔法でこんな状況なんてイチコロよ!」


「待って!なんか嫌な予感が…!」


「気のせいよ!『召喚!炎獄王パウエル』

パウエル!私たちをこの箱から出すのよ!」


「やはり起きているな!この女!

邪魔ばかりしおって!貴様も死ね!」


「パ、パウエル!早く!」


「御意!」


チュドーーーン


パラパラパラ


「こほっこほっ…ア、アルカー!!

確かに出られたけどもうすぐで死ぬところだったじゃないか!見ろ!箱どころか洞窟も破壊してるじゃないか!僕らが無事なのが奇跡なくらいだよ!」


そうなのだ、あたり一面焼け野原になっている。洞窟なんてあったことを感じさせないくらいのクレーター状態の地面である。地面は黒く焦げており、所々赤くなっているのはまだ、時間が経っていないことを証明しているようだ…。


「まっ、まぁまぁ落ち着いて!ね?

さっ、火傷のあとを回復しちゃうわよ。ついでにこのポーションも飲んでおきなさい!

これで最低限のエネルギーチャージも出来るから!」


だいたい炎獄王とか、名前からして大物呼びすぎでしょ!もっとこう普通の精霊とか穏やかなものにすべきだったんだよ。


「わかってるわよ!最初が肝心だから思いっきり張り切ったのに!」


あっ、そうかまだ考えていること読まれていたんだった。…悪い悪い。言いすぎたよ。

助かったことに変わりないからね。


「これからどうするんだ?この焼け野原にいるのもまずいんじゃないか?人が周りにいたらすぐに来てしまうぞ?」


「そ、そうね。場所を変えましょう!」


絶対、何も考えてなかったな…。


「…ヒューヒュヒュ。」


変な口笛吹いて怪しすぎる…。

こりゃ、前途多難だな…。

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