「転校生」


「では、今日から3組のクラスに入る転入生を紹介しますっ。入ってきて~~」


 それから1時間後の朝のHR。

 彼女と少しばかり話したと思えば、用事があると消えていったのだが——点と点がつながったようだ。


 担任教師の言葉の後、周りのクラスメイト達がぞわぞわと話し始める。女子かなぁ、男子かなぁ……なんて楽しそうに話しているのが僕には不思議に見えていた。


 答えを知っているとはいえ、そんなことどうでもいいだろうに。


 どうせ、話すこともなく終わるのだろうに、いやまぁ、ソースが僕自身だから言えるけど。この学校の生徒はいじめもしない。興味が無くなれば話してこなくなるのだ。


 だからこそ、僕は無関心に無表情を重ねて本を嗜んでいた。


 寂寥せきりょうと活気入り混じった僕とクラスの隔たりをすんなりと受け入れてしまった僕は我ながら最強だった。


 すたすたすたっ。


 煌びやかで簡素な文字の羅列のリズムに合わせて、彼女の足音が活気溢るる教室に響く。しかし、その瞬間。教室は静かになった。


 なんだなんだと胸が跳ねて、教卓へ視線を向けるとやっぱり彼女がいた。


 漆黒の長髪に、ルビーの様に輝いた真紅の瞳。


 豊満な胸で、女子高生とは感じさせない顔立ちのセーラー服を着た大人な彼女。


 紛れもない、朝に出会った謎の女子高生だった。


「今日から一緒の藤井彩花ふじいさいかさんです。札幌にはお父さんの仕事の関係で越してきたそうで、まだ制服もないみたいなので数日はセーラー服なのでよろしくねぇ~~。じゃ、私からはこのくらいかなぁ、どうぞ」


 そして、担任教師は教卓を譲るとゆったりと髪を揺らして彼女が立った。


「初めまして、藤井彩花です。名前は上でも下でも大丈夫です。出身は洞爺湖で田舎だったので札幌について教えてくれたら嬉しいです。よろしくお願いします」


 聞き入っていた僕としての感想は、少し第一印象とは違うくらいだった。もっとヤンチャな感じで話しかけてくれたし、結構遊んでそうな雰囲気だったのに。まさか、こんなに清楚な感じを出せるとは——思ってもいなかった。


 あまりにも美しく煌びやかな風格に固まる男子陣に、憧れの様に見入る女子たち。


 しかし、僕も気持ちは一緒で、そんな違った雰囲気の彼女に見入ってしまっていた。


「あぁ、えっとぉ……じゃあ、あそこの窓際の席空いてるからとりあえずあそこに座って~~」


「はい」


「——うしっ。じゃ、再会していきましょうかっ」


 無論、その席は僕の隣の空いた席。

 ふわりと舞った柔軟剤のいい香りに心奪われていると、彼女がとんとんと肩を叩く。


「っ」


「よろしくねっ」


 ニコッと笑みを見せる彼女に、僕の胸はもう一度ドキッと跳ねる。女子慣れしていない男子にはその表情は少し辛かった。


 

 HR後、案の定。

 彼女の席の周りは質問したがるクラスの人たちで埋め尽くされていた。


 うるさい。苦手だ。


 そう思い、僕が席を立つ。


 すると、隣の席に座ってみんなの話を聞いていた彼女も一緒に立ちあがった。


「——あ、私もっ」


 急だ。

 あまりにも急で周りの人たちは疑問を投げかけていた。その行く先を僕だと知ると男子も女子も意外そうな目で背中を見てくる。見なくてもそのくらい分かる。


 なんで——と言おうとした時には、僕たち二人は教室を抜け出していた。




<あとがき>


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《短編集》隣の席のぷにぷにでフニフニなおっぱいの女子高生がいっつも一人の僕をいじめてくる。 藍坂イツキ @fanao44131406

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