帰り道

バブみ道日丿宮組

お題:振り向けばそこに帰り道 制限時間:15分

帰り道

「ねぇ、本当にこっちで帰れるの?」

「私に任せてくださいよ。裏道事情に詳しい私が案内するんですから、先輩は安心してください」

 恋人と帰宅までの時間を道短くするための近道だったのだが、やはり遠回りしてる気がする。

 一緒にいたいって気持ちに嘘はない。

 けれど、夜も遅い。彼女になにかあってはおばさん、おじさんに申し訳がたたない。

「ねぇ先輩。あそこどうですか?」

 路地を進み抜けて現れた物体は、ネズミーランドにあるようなきれいな建物。どう考えてもマンションじゃない。

 休憩、宿泊、フリータイム。

 一瞬新たなカラオケルームかと困惑するかもしれないが、ラブホだ。

 つまり、性行為をする場所。

「……もしかして、ラブホに着たかったの?」

「だって、先輩。寒い中駅でずっと待っててくれたんですもの。ご褒美あげたいです」

「家の連絡は大丈夫なの?」

「ちょっと休憩してからいくってメールしました。楽しんでおいでって返ってきました」

 スマホの画面をむけてくると、確かにそのように書かれた。

 親公認の恋人だとはいえ……いいのだろうか。

 今からセックスしますだなんて、親はなにか思わないのか。

「ほら、行きましょう。遅くなったら、先輩の部屋にいきましょう」

 だったら、僕の部屋ですればいいじゃ?

 ここからだと、大通りに振り向いて、そのまま直進つけば帰れる。

「あれれ、せんぱーい。もしかしてこのラブホ知ってましたか?」

「前に通ったことあるよ」

 ははーん、笑い声。

「それで家のある方角を意識できたんですね。かくいう私も私の家の方向わかってますよ」

 さぁと手を恋人つなぎで結ばれて、そのままラブホの中に。

 たくさんの部屋が写ったパネルがでてきたので、彼女が入りたい部屋にいくことにした。

「おー、すごいですよ。ベッドが大きいのと、聞いてたとおりテレビからAVが流れるんですね」

 さすがに三角木馬とか、透明なお風呂だとか、回る台とかそういうのはなかった。

 普通のホテルにしか見えない。

「じゃぁ、シャワー浴びてきますんで。先輩は楽しんでてください」

 シャワー室に彼女は向かった。

 僕は時間を潰すものはないかと、テレビを付けた。もちろん、AVだ。いかにも昭和風という古い映像だ。最近のが流れたりすることはないのだろうか。

 チャンネルを変えても喘ぎ声の種類が変わるだけでなにもない。

「じゃぁ、はじめよっか」

 シャワー室から戻ってきた彼女は、全裸。

「せめてタオルくらいまいてくればよかったの」

「どうせ全部取られちゃうなら、なくてもいいかもって」

 それは……そうかもしれない。


 そうして、3時間ほどラブホで過ごし、終わったあとは僕部屋に戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

帰り道 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る