這いつくばるって漢字難しい
バブみ道日丿宮組
お題:忘れたい「えいっ!」 制限時間:15分
這いつくばるって漢字難しい
「定期落ちたんですけど?」
車内に響く声は、後部座席から聞こえる。
なにごとかと大半の人は後ろを見ており、その人物である女子高生を見つめてる。
『ーーあとで取りに来てください』
スピーカーから運転手の声が響いた。
「帰りがあるじゃん? 馬鹿なの? 死ねよ」
慈善団体じゃないんだから、死ねというのはおかしいだろう。
でもまぁ……定期券が椅子の下に落ちてしまったのは危機的状況にあるかもしれない。
もちろん私の場合の話だ。
私は全ての行動をスマホに委ねてる。
銀行、クレカ、バス定期、電車定期、食費、学生証etc.
日常における全てに近いスマホを落としてしまえばその日の全てができなくなる。再発行するにも番号がわからなければ意味がない。
だからこそ、
「手伝いましょうか?」
自然と言葉が出てた。
「手伝うって? 椅子の下に手つっこむの? マジウケる」
手伝うのやめようかな。
制服からして、高校二年。私の3つ下だ。まだまだ社会の厳しさを知らないゆとり世代。
「あなたがやるのよ、私は方向だけいうから」
私のほうが偉い。
「あんた見えてないのにできるわけ?」
「動かせば動くでしょう」
はぁーんというため息が女子高生からもれた。なんだこいつ、喧嘩売ってるのか?
「私も落としたことあるから、やらないよりやったほうがいいよ」
にっこりドヤ顔。
いやぁ……あの時は声出して必死で、今思うと恥ずかしかったな。
そう考えれば、この女子高生は運がいい。恥ずかしがる要素が1つもない。いや……スカートの中身がポロリするかもしれないことを考えてみれば、もしかするとあるかもしれない。
ただ……椅子と椅子の間から覗くには、反対側でしか効果はないだろう。そして反対側は私。男性客は後部座席にはいない。
なら……恥ずかしがる必要もない。
「ほら、はやくしなさいよ」
「はぁ? あんた何様のつもりなわけ?」
「定期いらないならそれでいいけど」
無言の沈黙が返ってくる。圧に包まれた視線もついでに向けられた。
「……わかった。はやく指示出して」
椅子の下に行くべく、這いつくばった女子高生はスカートの中身がぽろりどころか、丸見えだった。
いちごのプリントか……。
「ねぇはやくしてくんない?」
「もうちょっと頑張って手を動かして」
最悪という言葉と共に彼女は手を動かした。
そういったことが通学中にあった。
結果だけでいえば、彼女は定期券を回収することはできなかった。
なぜかって?
私が適当に応えてたからに決まってるじゃない。
偉い私に這いつくばらせるのが目的だったんだから!
這いつくばるって漢字難しい バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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