えーと、ね。背中にオバケをはると……ね。シュワシュワ消えちゃう兄弟喧嘩のおやつ
本日のお当番は、茶白猫兄弟のエートくんとハルトくん。
二回目のお当番さんです。
お菓子は—— おっと、その前に昨日のお話を。
エートくんとハルトくんは仲良くお菓子の準備をしていたのですが、オバケのことで言い争いになって、取っ組み合いのケンカになってしまいました。
「オバケなんていないよ!」
「いるよ!」
「いないったら!」
「いるったら!」
「いないったら、いない!」
「いるったら、いる!」
そもそも、なぜオバケのことでケンカになったのかというと、ハルトくんが「ぼくの背中に、オバケがいるよ」と言ったことが
「どこにオバケがいるの?」
エートくんがキョロキョロしながら言うと、ハルトくんは得意そうに背中を見せました。
「ほら! ぼくの背中に背後霊!」
確かにハルトくんの白い背中には、茶色の猫が張り付いています。
それを見て、エートくんは呆れました。「それ、ただの毛並みの模様じゃん」
ハルトくんは、ムキになって言い返します。「ただの模様じゃないよ。背後霊だよ、守護霊だよ、オバケだよ!」
「オバケなんているわけなーい」エートくんは笑いました。エートくんの背中には
「いるよ! ぼくの背中にいるの見えないの?」
「だから、それは模様だって」
「オバケだったら!」
「それなら、証拠見せてよ。たとえばさ、オバケならヒュードロドロって消えたりするよ。背中のオバケが模様じゃなくて、本物なら、消えるところを見せてよ」
エートくんに言われて、ハルトくんは少し考えてから言い返しました。
「そのうち、消えるよ」
「消えるわけないよ、模様なんだから!」
「模様じゃないよ、オバケだよ!」
「オバケなんていないよ!」
「いるよ!」
「いないったら!」
「いるったら!」
「いないったら、いない!」
「いるったら、いる!」
というわけだったのです。
ふたりがケンカしている間に、いい匂いがしてお菓子が焼き上がりました。
焼き上がったばかりのお菓子の前で、ケンカなんかしていられません。
ふたりはさっそく試食しました。
「うん、上出来上出来。お口の中でシュワシュワ、フワッと消えちゃうよ」
「シュワシュワ、フワッと消えちゃうなんて、オバケみたいだね」
「そうだ! ぼくの背中のオバケも消えているはずだ」
エートくんが「毛並みの模様が消えるはずない」と言うより先に、ハルトくんがクルッと背中を向けました。
「うわっ、本当にオバケ、消えていなくなってる!」
エートくんは叫びました。
「ほらね」
ハルトくんは得意満面です。
取っ組み合いをしている間に、背中の毛並みがぐしゃぐしゃになって、
でも、このオバケ、毛並みに沿ってひと撫でふた撫ですると、あら、不思議!
また元通り、ヒュードロドロと
ここで、
白いメレンゲとクリームチーズがたっぷりで、こんがり焼き色のついた茶白猫っぽいフワフワのお菓子が本日の日替わりです。
もう、おわかりになりましたか。そうです、本日のお菓子はスフレチーズケーキなんです。
お口の中でシュワシュワ、フワッと美味しく消えるスフレチーズケーキ体験、ぜひ猫のお菓子屋さんでお試しください!
お買い上げのお客さま特典として、ハルトくんに背中のオバケも見せてもらえますよ。
消たり現れたりするところが見たければ、ハルトくんの背中を優しく撫でてあげてくださいね。
そのとき、注意点が一つ。
乱暴に撫でたり無茶な撫で方をすると、オバケの祟りがありますよ。
その点だけはご注意を。
猫のお菓子屋さん 水玉猫 @mizutamaneko
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