分厚い教養の上にこそ建つ、極上の娯楽大作

 第三次大戦後の魔都・上海を舞台に、異能の探偵と殺し屋が暗躍、またいろんな反社会的組織と激突するお話。
 ケレン味たっぷりの異能ノワール・アクション伝奇です。何がすごいってもうそのエンタメぶり! 飄々とした異能探偵にその助手たる無表情のメイド風少女、影のある殺し屋と孤独なマフィアのお嬢様など、厨二心をくすぐるキャラクターが盛り沢山。それが治外法権化した魔都を舞台に暴れ回るという、もう心地よさの塊みたいな物語でした。
 が、真に魅力的なのはむしろその先。わかりやすいエンタメを貫いた上で、しかしそれを下支えする様々な要素——具体的には舞台設定や小道具などの、その圧倒的な知識量にこそ最大の娯楽性があるのだからとてつもない。
 なにしろ、出てくる名詞の数がとにかく多い。それも一般常識的なものからマニアックな知識まで、果ては教養と呼ぶべきものさえも。物語世界を、ひいては作品そのものを構築するこれらのパーツの豊富さそのものが、そのまま本作最大の魅力となっているのが印象的でした。いやこれ本当にとんでもない……知の物量にあてられるかのような読書体験。すごい。
 そしてその上で、主軸自体はどエンタメしてくれてるのがもう本当に最高! とても楽しい娯楽大作でした! 間木さんが好き!