第398話 梁山泊領域、踏破
「[シン]!」
【九天玄女】が溶け込むように同化し、呆けている[シン]に俺は
『はう……マスター……』
「大丈夫か!? どこかおかしなところはないか!?」
[シン]の身体をペタペタと触り、異常がないかどうか確認する。
ふう……どうやら、目に見えて異常はない……って。
「どうした[シン]!? やっぱりどこかに異常が!?」
『はははははう!? そ、そんなに[シン]の身体を触っちゃヤなのです……マスターはデリカシーがなさすぎなのです……』
顔を真っ赤にした[シン]が恥ずかしそうに抗議をするが……一体どうしたっていうんだよ……。
「ハア……ヨーヘイ、[シン]だって
「あ……そ、そうか……」
プラーミャに指摘され、俺はようやく気づく。
そういや[シン]も女の子だったな……。
「その……す、すまん……」
『はうう……仕方ないので、アイス三つで勘弁してあげるのです』
「はは……」
口を尖らせ、プイ、と顔を背けながらそう話す[シン]に、俺は思わず苦笑した。
「ふふ……とにかく、これでこの“梁山泊”|領域【エリア】も踏破、ということになるのかな?」
「そうですね……これで[シン]は、新たなスキルである【梁山泊】が無事に手に入れたと思いますが……」
本来のイベントならそれで終わりだけど、その後に予想外のことが起きたため、俺は少し不安になる。
「ふむ……とにかく、一度ガイストリーダーで確認してみてはどうだ?」
「はい」
俺はポケットから取り出し、[シン]のステータスを確認すると……っ!?
—————————————————————
名前 :シン(神行太保)
属性 :神仙(♀)
LV :93
力 :D+
魔力 :SS
耐久 :C-
敏捷 :EX
知力 :S+
運 :A-
スキル:【方術】【神行法】【九天玄女】
【水属性反射】【火属性反射】【氷属性反射】
【闇属性反射】【聖属性反射】【邪属性反射】
【状態異常無効】【物理弱点】【繁殖】
—————————————————————
そこに表示されていたのは、【梁山泊】ではなく【九天玄女】のスキル。
「こ、これは……」
「ど、どういうことヨ……」
「ク、クク……よもやあの美女が、スキルとはな……」
後ろから画面を
どうして【梁山泊】のスキルを得ることができなかったのか……そして、どうして【九天玄女】が代わりにスキルとして表示されているのか……。
「う、うむ……ヨーヘイくん、こうなったら一度、その【九天玄女】のスキルを使ってみてはどうだろう……?」
確かにサクヤさんの言うとおり、どんなスキルか分からないのであれば、使ってみるしかない。
「……[シン]」
『はう、やってみるのです』
俺の呼びかけに、[シン]はフンス、と気合いを入れると。
『いくのです! 【九天玄女】!』
両手を空へと突き上げ、スキル……【九天玄女】を発動させる…………………………って。
「あ、あれ?」
『はう?』
辺りは静まり返るばかりで、何も起こらない……ぞ?
「シ、[シン]、ちゃんとスキルは使ったのか?」
『はうはう! 確かにいつもの要領で【九天玄女】を発動してみたのです! 絶対に、何か起こっているはずなのです!』
[シン]は必死にそう訴えるけど……。
俺は振り返ってサクヤさん達に目で確認するが……うん、ですよね……。
「な、なあ、もう一回試してみてくれ」
『はうはうはう! もう一度! 【九天玄女】!』
同じように両手を掲げて大声で叫ぶが、結果は同じだった。
「ど、どういうことだ……?」
『はうううう……』
俺と[シン]は、この結果に思わずうなだれる。
いや、ちゃんとステータスにスキルが表示されているんだから、使用できて当然だろ!?
なのに、なんでうんともすんとも言わないんだよ!?
「ふむ……ひょっとしたら、その【九天玄女】には発動条件があるのかもしれないな……」
「発動、条件……?」
サクヤさんの言葉に、俺は振り返っておずおずと聞き返した。
「うむ。基本的に、スキルに関してはアクティブスキルとパッシブスキルがあるが、このうちアクティブスキルに関しては一定化の条件が整って初めて使用可能となるものが、
確かにサクヤさんの言うとおり、そういったスキルがあることは俺も把握している。
でも、本来手に入れる予定だったスキル、【梁山泊】については常時発動可能のスキルだった。
だから、【九天玄女】も同じだと思ったんだけどな……。
「……いずれにせよ、その【九天玄女】がヨーヘイくんに対して害をなすスキルではないことは確かだ。ならば、ますは発動条件などを一緒に調べていこうじゃないか」
「サクヤさん……」
そう言ってニコリ、と微笑むサクヤさんに、俺は思わず見惚れる。
そうだ、な……肝心のクリスマスまでは、まだ半年以上もあるんだ。だったら、今このタイミングで焦ったりする必要はない、か……。
「はは……やっぱりサクヤさんは最高ですよ」
「あう!? きゅきゅ、急に何を言いだすんだ!?」
俺の言葉に、サクヤさんは顔を真っ赤にしてオロオロする。
はは、普段の凛とした姿も素敵だけど、こういう仕草も可愛いなあ……。
「ム……ヨーヘイ! もう用が済んだなら帰るわヨ!」
「うお!?」
何故かむくれた表情のプラーミャに強引に腕を引っ張られ、俺は思わずよろめいた。
でも、そうだな……ここでの目的は全て果たした。
なら。
「よし! んじゃ、帰ろう! 今日は“梁山泊”
『わあい! なのです!』
「うむ! それは楽しみだ!」
「フン……言っとくけド、
「クク……友と一緒にカフェで過ごすのも一興、だな」
そして俺達は、“梁山泊”
【web版】ガイスト×レブナント クソザコモブな俺は、相棒の精霊を美少女に進化させて最強に! サンボン @sammbon
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