梅雨明けの夏到来編
梅雨も明けて本格的な夏がやってきました。名付けて梅雨明けの夏到来編。
おまるこまる堂々の第2弾!
女二人、威勢よく壇上に登場。
おまる「皆さん、お久しぶり。おまるで~す」
こまる「こまるで~す。暑い中おこしいただいて、ホンマおおきに」
両者、お辞儀をしつつ客の顔をぐるりと見渡す。
おまる「それにしても、毎日暑うてかなわんなあ」
こまる「日本列島ぜんぶ、すっぽり異常気象やわ」
おまる「こんなに暑いのに、わてとこのクーラーぶっこわれてしもてな」
こまる「クーラー!」
おまる「近所の電気屋さんに修理頼んでも、忙しい言うてすぐ来てくれへんのや」
こまる「電気屋!」
おまる「・・・なんや、わて何か変なこと言うたか?」
こまる「そうやあらへんけど、えらい生活が文化的になったなあ思て」
おまる「文化的?どういう意味や?」
こまる「そんなキツう睨まんといて。ただでさえ恐ろし顔してんのに、お客さん全員帰ってしまうで」
おまる「なんちゅう失礼な・・(客席に向かってニコリ)わては口裂け女やあらへんで~けっこうええ女やろ?なあ皆さん」
おまる、身体をよじらせて客たちに訴えかける。
こまる、シラケた様子で扇子をしきりにあおぐ。
こまる「あんた正月逢うた時は公園で生活している言うてたけど、今はちがうんかい?」
おまる「公園?何世紀前の話や。今わてはな、豪邸に住んでるんやで」
こまる「豪邸やて、嘘言いなはんな(鼻でせせら笑う)」
おまる「嘘やあらへん、実はな・・年末ジャンボ宝くじが当たったんや」
こまる「ホンマか!一体いくら当たったんや」
おまる、こまるにそっと耳打ち。目をまるくして驚くこまるに、人差し指を立て慌てて口止めのポーズをする。
おまる「ま、借金返して家買ったら、だいぶのうなったけどな」
こまる「へえ~宝くじも当たることあるんやなあ、わても買えばよかった・・」
おまる「人生山あり谷ありや、神様はわてを見離しはせえへんかった」
こまる「どうりでええ服着てると思たわ、そんならクーラーくらい新しいん買えるやろ」
おまる「いんや、残りの金はな、大事に使わなあかんのや」
こまる「何に使うんや」
おまる「そりゃあんた、結婚資金にきまってるやないか」
こまる「え?相手はもう見つかったんかい」
おまる「今捜してるところや、今日もな実は見合いしてきたんやで」
こまる「ほお~こりゃ驚いた。どんな男はんやった」
おまる「見合写真はままやったんやけどな」
こまる「実物はひどかったんかい」
おまる「いやな、あんまし文句は言いとうないけどな・・写真は正面しかわからんやろ」
こまる「あたりまえや、後ろ姿の見合写真や見たことあらへん」
おまる「それが悲劇のもとやったんや、写真で見たら髪がフサフサやったのに会うてみたら後半分がきれいにハゲとったんや」
こまる「・・そんな髪あるんか?前だけフサフサで後ろがオールハゲ?もしかして増毛中なんちゃうんか。見合にまにあわんかったんやで、かわいそうに」
おまる「だからな、なるべく頭の後ろ見んようにと、わてが先頭になって歩いたんや」
こまる「あんたもええとこあるやないか、気配りしたんやな」
こまる「やろ?そやのにな、ハッと気付いて振り向いたら姿が見えんのや」
こまる「トイレでもいったんか」
おまる「もう、それから捜し回ったで。アデランスやアートネイチャーの店ものぞいてみたけど、どこにもいてへん。しまいに仲人はんとこに電話したら、さっき断りの連絡があったやてぬかしおるんや」
こまる「そりゃ、ひどいなあ」
おまる「先方の理想のタイプは三歩下がって静かに後ろからついて行く女性なんやと。ようそんなずうずうしい事言えるわ(鼻息荒く)おのれの後ろ姿知らんのかい!」
こまる「今度バックの拡大写真撮って送ってやったらどないや」
おまる「・・もうかまへん、わては過ぎたことにはこだわらん」
こまる「(小さく拍手して)かっこええ。でも見合写真は正面だけじゃ不安やな、次回からは後ろのも必要やで」
おまる「そんなこと、ホンマはどっちでもええねん。そんなつまらんことより、わてを心から愛してくれる男はんやったら、それで十分なんや」
こまる「話のつじつまあわんな・・まあええわ、見かけはどうでもかまわんのやな」
おまる「そりゃ本音をいうたら、ええにこしたことあらへん。あんたかてそうやろ」
こまる「わての亭主はなあ、今でこそあれやけど若い時は、なかなかの男前やったんやで」
おまる「そういや、あんた結婚してたんやな。(小声で)世の中やっぱり変や・・(ため息をもらし)ダンナさん、よう家出してるみたいやけど最近は落ち着いたんか?」
こまる「やっと女房のありがたみがわかったようや、なんやかんやいうても長いこと連れ添うてる夫婦やからな」
おまる「なんや、のろけてんのか?独り身にそんなん自慢せんといてや」
こまる「別にしとらへん。わてが言いたいんわな、見てくれは変わっていくいうことや。どないな美人や美男も、太ったりシワが寄って変わってしまうもんなんや」
おまる「身につまされるわあ、わてもな二十年以上昔はクレオパトラか楊貴妃の再来や言われてたんやで」
こまる「またまた大ボラ吹かんといてえな」
おまる「(いつになく真面目な顔で)天地神明に誓って真実や」
こまる「・・・信じられへん。それが仮にホンマやったら、クレオパトラさんや楊貴妃さんは早死にして大正解やったな~長生きしてたら歴史に名前は残らかったやろ」
おまる「あんたもつくづく毒舌家やなあ、わて傷ついてしもたわ」
こまる「話が横道それてしもた。つまりな、わてが言いたいんは結婚するんならハートで選べちゅうことや。選ぶやいうたら傲慢やな・・もし望んでくれる男はんがいたらありがたいやないか。致命傷なかったら良しとせよ、先輩としての忠告やから素直に聞きや」
おまる「そないいうても、ここひと月ばかし見合いしまくってたんやで。数打ちゃ当たるかと思うたけど、今のところ全滅や」
こまる「全滅?」
おまる「そうや、全部先方から断れてしもうた」
こまる「そりゃショックやな」
おまる「今日会うた男はんみたいにパッとせんのに袖にされたら、めちゃくちゃ気分がめいるわ。わて女の魅力ないんやろか」
こまる「そんなことあらへんわ、胸板厚うてたくましいし度胸もあるやんか」
おまる「わて男やないんやで、全然ほめことばになっとらへんわ」
こまる「でも、見合い相手の中にひとりくらい好みの男はんいてたやろ?」
おまる「いやあ・・実はおったんや。キムタクが年くって渋うなったような感じでな(うっとりとした目つきで)ものごっつい好みやった」
こまる「超美男と野獣の見合いやな」
おまる「誰が野獣や?ま、それでなわてその男はんには作戦つこうたんや」
こまる「どんな作戦や」
おまる「これや(手提げ鞄から一枚の紙を取り出す)」
こまる「なんや?婚姻届けやないか」
おまる「会うた日にこれ持って家に押し掛けたんや、善は急げちゅうからな」
こまる「・・・それでどうなったん」
おまる「毎日家に行ったり外で待ち伏せして届けにサインするよう迫ったんやけど、ある日とつぜん行方不明になってもうた」
こまる「蒸発したかノイローゼで入院したかのどっちかやな、気の毒に・・それにしても、あんた警察につかまらんでよかったな」
おまる「とんでもない、今ストーカー容疑で指名手配かかってんねん。今日も家ぬけだしてくるん大変やったんやで」
こまる「え~(絶句)」
おまる「もうそろそろヤバいわ、逃げ切れる自信のうなってきたから、今晩からまた阪神中央公園で寝泊まりしようかと思うてる」
こまる「信じられん人や・・大丈夫かいな」
おまる「公園にはダチがいっぱいいるから平気や。さっきもう話つけてきたし、警察の網くらいうまいことくぐってみせるわ」
こまる「そなんいうて、こんな公衆の面前で堂々と発表してええんか?もしかして前にいてはるお客さんの中にも警察関係の方おられるかもしれんよ」
おまる「(客席に視線を走らせ)おまわりさんか婦警さん、もしいてはりましたら手をあげてくださ~い」
こまる「ほら、いわんこっちゃない。ひい、ふう、みい・・あっちでも手あがってるで、いったいどないするん?」
おまる「(硬直した顔つきで)わて、といあえず逃げるわ(くるりと背を向けて)ほな、悪いけどあとは頼んだでえ」
こまる「そんな無責任な、ちょっと待ちなはれ」
こまる、逃げようとするおまるに後ろからからみつく。
おまる「離してえな、つかまるやないか」
こまる「ムダな抵抗はやめなさい」
おまる「もうええわ、あんた引きずったまま逃げてやる。人質にもなるしな」
こまる「なんやて?」
こまる、慌てておまるの背中から飛びのく。
おまる「それでは皆さん、さいなら~」
こまる「暑いなか、ホンマありがとさん」
笑顔で両手をふりつつ、壇から二人退場。
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