第3話
どうやら俺は、すでに失恋したあとだったみたい。
「知ってる……って、ん? ……知ってる? 知ってる、の?」
俺は
「光が言ったんだ。先週、ベッドルームで。『ニカくん、らいしゅき』って」
(……は? 俺ぇ?)
身に覚えなど全くない。俺が覚えているのは、朝になって目が覚めると、この家のニカくんのベッドの中で、ニカくんの服を着ていたことだけ。
その他は、よい夢を見たあとの
(あれ? もしかして、夢じゃなかったの? ていうかニカくん今、『光』って言った?)
ニカくんが言うには、酔い潰れていた俺は彼の家にお持ち帰りされたあと、
(ん? 今、『お持ち帰り』って言った? えっ? ニカくんが俺をお持ち帰り?)
ニカくんの
俺は心を決めて、ニカくんに問いかける。
「ニカくん、……なんで言ってくれなかったの? っていうか俺に、『男』に
言い終わった
ニカくんの溜め息が一つ聞こえた。
俺はさらに目を開くのが
今、彼は
俺の胸は失恋の
「初めから、手放すつもりなかったから」
ニカくんの声がした。
俺は思わずニカくんの顔を見た。俺はとうとう
俺がその横顔を見つめていると、急に彼がこちらを見た。
「
その言葉の直後、俺の唇の上に
俺は
「な、何! なんで!」
部屋中に、俺の声が響いた。
俺の上にいるニカくんは、俺を見つめている。まるで愛しい人に向けるような
今度は、俺の左頬が温かくなった。
「もう一週間も自分の恋人に触れられなかったんだ。
「どういうこと? なんの話?」
俺が
「『愛してる』って言ってるんだよ。光」
俺は全身が
俺は右手の
その時、俺の右手が持ち上がった。
その先には、微笑むニカくんがいる。
彼が俺に近づいてきて、
次には左の
頭の奥から
その時、俺は頭の
「ニカくん、彼女は……? あの可愛い女の子……」
ニカくんの動きが止まる。
俺は
俺にはニカくんが今、その可愛い彼女への
俺はニカくんのその姿に、胸が
その時、ニカくんに左肩を掴まれた。
「なんで今、元カノの話になるかな……」
そう言い終えたニカくんの顔は、微笑みながらも目が完全に座っている。
「や、あの、……えっ? 元カノ? えっ?」
俺は混乱のあまり、頭を抱える。
ニカくんの大きな溜め息が聞こえた。
俺は頭を抱えていた手で両目を
「彼女とはもう、一年以上も前に
(……別れた? なんで?)
ニカくんは俺の心の問いに答えてくれた。
「光が好きだから」
ニカくんは両目を覆った俺の両手を静かに外す。そこには、眉を寄せて少し
ニカくんは親指で俺の残っていた涙を
「光、大好き。光は?」
唇が
「おっ、俺ぇ、俺もぉ、ニカくんっ、がぁ、らいしゅきぃ」
「うん、知ってる」
そう言ってニカくんは微笑んだ。
ニカくんの綺麗な顔が近づいてくる。俺が自然と目を閉じると、ニカくんはそれが当然かのように俺の頬に触れて、俺の唇に唇を重ねる。
唇が
自分で言うのもなんだけれど、俺は
俺は涙が止まらない。けれどその度、ニカくんが親指で俺の涙を拭っては微笑み返してくれるから、俺は息が詰まるほどに愛しさが込み上げる。
ニカくんが俺の首を唇で
口と口が離れて、俺とニカくんは額を合わせていた。
俺は自然と笑みが込み上げる。ニカくんも微笑んでいる。
俺は今、ニカくんの家のソファーで、ニカくんの腕の中にいて、彼の胸板に頬を
(これは夢じゃない!)
すでに俺は、ニカくんとの恋人歴一週間。
恋人になれていたこの一週間を知らずにいただなんて、
ニカくんが忘年会に遅れた理由。
聞けば、俺と過ごす今日のためにお酒とデリの
どうやら、ニカくんの家にお泊まりしたあの晩、俺は彼に『俺の理想のクリスマス』を
俺に禁酒令を出したのは、ニカくん以外の人に
けれど俺が何も覚えていないことに気づいていなかったニカくんは、忘年会を抜けた俺を見て「
無防備な顔を見せている『俺のニカくん』の
「ニカくん……、大好き」
「俺も、光が大好き」
流し目がちに潤んだ彼の瞳が、すでに俺を見つめていた。
俺は
「そんな可愛いキスじゃ、足りないな」
俺はニカくんにキスごと押し
いつの間にか、俺の目の前には、俺好みの
「ひゃあぁぁ」
俺は興奮のあまり咄嗟に手で口を覆うも、自分でも驚くほどの高い声を発していた。
思わずニカくんを見ると、彼は嬉しそうな顔をして俺を見ていた。
「光、そろそろ黙って」
『俺のニカくん。明日、クリスマスツリーを一緒に買いに行こう?』
Happy Holidays 水無 月 @mizunashitsuki
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