(脚本）SHIBUYA病

fly day

〇渋谷スクランブル交差点

　　　仮装した人々が集まって騒いでいる。

　　　一台の車が止まり、武装した渋谷孝（２１）、恵比寿豪（２５）、代々木

　　　希（１８）が出てくる。

　　　豪、サングラスを取り、辺りを見渡す。

豪「ぶっ倒し甲斐あるな！」

　　　興奮した男、豪に近づいてくる。

男「シブヤリムーバーだ！へへへ！」

　　　希、専用の銃で薬を打ち込む。

　　　倒れ込む男。

希「ボーっとしないで。感染したらどうすん

　んの」

　　　孝、銃をセットしながら、

孝「ハロウィン。一年に一度のフライデーです」

豪「金曜は昨日だろ？」

　　　大勢の人が空中に跳んで襲ってくる。

　　　見上げる三人。

希「こっちのね！」

豪「跳ぶ方か！」

　　　孝、専用銃。豪、投擲。希、二丁拳銃で倒す。

　　　倒れ込む人々。

豪「おれはシブヤ病感染者の救助、避難。お

　前らは行ってこい！」

孝・希「了解！」

　　　孝と希、人混みに走っていき、人々に薬を打っていく。

　　　渋谷舞（１７）を見つける孝。駆け寄って、

孝「舞！なんでここに。危ねえだろ！」

舞「お兄ちゃんか。だって楽しそうだったんだもん」

孝「シブヤ病に感染するぞ！早く帰れ！」

　　　舞の後ろから手が伸びてくる。

舞「でも気持ちいいらしいよ？しかも若い子は重症化しないって――」

　　　孝、舞を抱き寄せて庇い、手が背中に触れる。

　　　孝、心臓がドクドクと脈打ち、狂った笑顔で空を見上げる。

　　　手を挙げながら、

孝「ぽんぽーん！」

　　　舞、口を押さえ、泣き目で、

舞「お、兄ちゃん」

　　　孝、舞に手を伸ばし、

孝「たまんねえぞ！気持ちよくなろ――」

　　　孝、ピタッと手が止まり、体が震え出

す。

×　　　　　×　　　　　×

（フラッシュバック）

　　　泣いている舞（１２）。

舞「シ、シブヤ病だって馬鹿にされた」

孝（１６）「人の苗字をバカにしやがって。

お兄ちゃんが守ってやるからな」

×　　　　　×　　　　　×

孝「ううおおお！」

　　　自分の銃で自分を撃つ孝。倒れ込む。

　　　希、孝に駆け寄り、笑顔で手を伸ばす。

希「せーんぱい」

　　　豪、希に薬を打ち込む。

　　　倒れ込む希。

　　　ぼんやりした目で豪を見る孝。そのまま目を閉じる。

〇同・朝

　　　バッと起き上がる孝。

　　　周りを見渡すと、ゴミを拾う人々が。

豪「感染後はなんであんなに従順なんだろうな」

孝「すみません。おれ――」

豪「妹は無事だ。あとは任せろ」

　　　涙を浮かべて頷く孝。立ち上がって歩き出す。

　　　路地で女に手を伸ばす男。

　　　孝、それを見て慌てて銃を構える。

　　　キスをする男と女。

　　　孝、ため息をついて銃を下ろす。

孝「自粛してくれよ……」

　　　空を見上げる孝。

孝「いや、でも……」

　　　胸に当てた手を空に挙げる孝。