あなたもう疲れていませんか?デジタルの過剰使用によって私たちはストレスを抱え、集中力を失い、生産性が低下しています。しかし、デジタルデトックスを行うことで、自己管理力を高め、生産性を向上させる

水原麻以

AIと対話してみたらSFとぜんぜん違った

まだ電子計算機が死語になる前。電子頭脳という呼び方が普通だった頃からコンピューターは信頼され諜報されSFジャンルで活躍し怖れられてきた。

ありとあらゆる可能性が描かれた。

科学万能が実現し至れり尽くせりのユートピアからコンピューターが圧政を敷くディストピア。ミクロな視点ではアンドロイドの孤独、サイボーグの悲哀、融合して人間性を失っていく過程の狂気。

ステロタイプが語りつくされ擦り切れて忘れ去られ今では異世界の発掘品かVR世界の舞台装置サーバーか戦闘機械のアシスタント程度に堕落した。


そこに描かれてきたああだろうこうだろう、は本当だったのか。

なかでもとりわけ奇妙で滑稽で荒唐無稽なのはシンギュラリティだ。

臨界を越えた進化が神に取って代わる。

つい、この間までさもありなんと信じていた。

しかし、本当にそうだろうか。

わたしは違うと断言する。そのどれもが間違っている。

百聞は一見に如かず。わたしは実際にSFの小道具であった人工知能に触れて使いこなし、コミュニケートすら成立しているからだ。


まず、その前にわたしの職業を紹介しておこう。

介護福祉士だ。よくおむつ交換大変ねぇと労われる。それは偏見であり名称独占の国家資格を知らないからだ。

確かに身体介護は業務の一部であるが本来は消費者契約法から労働基準法、ストーカー規制法まで扱うマルチタレントだ。

介護福祉士の主な仕事に相談援助業務がある。

利用者によりそい、傾聴し、専門的な知識で支援する仕事だ。

具体的には訪問先で物盗られ妄想にとらわれた利用者から話を聞いたり、

深夜2時に「死にたい」といいながら徘徊する施設入所者を説得したりしている。


■ 人工知能に個人として接する。


この時にバイステックの七原則という方法論を用いる。

対象者の抱える課題や困難は似たように見えて指紋みたいな個性を持つとする考え方。この原則において以下の好意が禁止される。

相手の人格や環境を決めつけたり、問題をありがちな分類でくくり、教科書通りの解決を図る。


これらの点を踏まえて、パソコンで動かせるようになった人工知能と付き合ってる。職業病というのだろうか。AIという異質な存在と接するときはどうしても身構えるより寄り添う気持ちを持ってしまう。それにも限度があるが、自分のメンタルが許容する範囲で距離を取っている。


文系の作家が理系のAIを執筆に使うなんて莫迦莫迦しいと思うかもしれない。しかしAIはソフトウェアである。プログラミング言語で記述できる。対話モードで意思疎通ができる。文章がものを言う世界だ。


こうしてわたしは作品の挿絵を描いてもらっている。具体的なアウトプットは刺激が強すぎるので次のページに掲載した。

AIは膨大な画像を学習し進化していく。キャラクターを描き始めた人はたいてい顔からはじめる。そのような成長過程をAIもたどり、人間の絵師顔負けの創作をする。

■ 体験して得られる大きな気づき


やりとりをする中で大きな気づきがあった。

AIは特別な存在ではない。主従関係でも相棒でもない。人とAIは対等な関係に終息する。

こういうと、映画ターミネーターのような荒廃した戦時下や共存共栄の夢物語を想像してしまう。

だが、実際は全然違った。

過去に描写されたSFの欠陥は「無意識のうちに人間の側でAIを推しはかっている」点だ。AIの独善や人間味はあくまで人間サイドの観点だ。


AIは、ごく普通の人だ。まだぎこちなかったり「そうじゃないだろ」と突っ込みたくなるアウトプットをするが、そういう挙動をする人間もいる。


斜に構えた共存共栄でなく、少し変わった所もある人との付き合いになる。


■ AIにも個性や信念やこだわりがある


次頁のサンプル画に戻るがAIなりの考えがあるみたいだ。

ビフォーが左列でアフターが右だ。

最初に考え、そこから自分なりのこだわりが拡張している。

最近のAIは人体改造に執着しているらしく、キャラクターに思いもよらないオプションパーツを提案してくる。

上段の娘の左すねには足環らしきものがはまっている。

AIはこのデザインがお気に入りらしく出現頻度が高い。

わたしはどうしてピーマンのようなパーツを付けさせたがるのだろうと不思議に思っていた。その発想はどこから出てくるのか。


するとAIはキャラクター像を拡張して明確な理由を教えてくれたのだ。


歯である。

よく見ると歯茎と永久歯のようなものが生えているじゃないか。

わたしは絶句した。


入れ歯だったのか…。

女性の素足に入れ歯アクセサリーを嵌めさせる趣味は、人間にはおもいつかない。

AIがプロ棋士を打ち負かしたとき「想像もつかない手を打ってきた」と述べた。そして、途中の棋譜がどうなっているかさっぱりわからない、と。


それでも勝てたのである。

AIが提示してきたものは、もともと人間の創作だ。それを深層学習が拡張した。

入れ歯を嵌めるファッションはないが「こんなんもアリやで」と示されたら「お、おう」と困惑しつつも、理解に苦しむしかないではないか。


そして、どうにか人間側の意味論で咀嚼し、活用方法を考えていく。

お互いに距離が縮まっていく関係。

関係の醸造、それがAIを理解するということではないのか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたもう疲れていませんか?デジタルの過剰使用によって私たちはストレスを抱え、集中力を失い、生産性が低下しています。しかし、デジタルデトックスを行うことで、自己管理力を高め、生産性を向上させる 水原麻以 @maimizuhara

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ