自己への執着のみでできた人間の、永遠に途切れることのない業のループ

 母親のお腹の中にいた頃、双子の姉を食い殺したという『僕』が、その後の人生について語るお話。
 SFです。こんなナリ(文体)してしっかりSFしてるのがもうすごい。
 タイムパラドックス要素の扱いが見事なのはもとより、語りの最中にちらほらとSF的世界観が顔を出していたりして、その味わいがまたなかなかどうしてクセになるのが最高でした。なにこれすごい。
 主人公、というか『僕』と『妾』の存在そのものが好き。これほどまでに生臭く肉体に依存しながら、でもその実やってることは人というより、「業のためだけに存在している装置」みたいなところがある。つまり本作は人の有り様や情緒の物語ではなく、もう作品のコンセプトそのものですべてが完結しているというか、最初から完成されている一個のでっかい〝呪〟を浴びせられているかのような、この奇妙な読書感覚に圧倒されました。濃ゆぅい!
 一見、古典文学的な人間のドラマのような顔をしながら、その実ホラーかSFショートショートに似た種類の「これはやべえ」をぶつけてくる、この姿勢そのものの面白さ。加えて、その濃さ。単に独特という言葉で済ますにはあまりにも独特すぎる、なんか異様な呪いパワーの塊みたいなすごい作品でした。やべーやつすぎる!