陰惨な復讐のためだけの世界

 日中に経験した嫌なことに関して、その復讐をする夢を夜毎に見てしまう女性のお話。
 ホラー的なショートショート、あるいはエログロ描写の詰め合わせ的な作品です。寓話的な読み方もできるものの、どちらかといえばきっと残酷描写そのものが本旨というか主体。こだわり抜かれたシチュエーションに、熱の入った描写。バイオレンス!

〈 この先ネタバレを含みますので未読の方はご注意 〉

 中盤の場面、子供の出てくる下りが最高でした。あの瞬間の衝撃。主人公自身もショックを受けているところと、その結果として彼女の取った行動。
 この夢自体がそもそも、という話でもあるのですけれど、子供への対処の仕方で彼女の〝目の前の問題から目を背けようとする傾向〟がより確定的に示され、そのおかげでもう現実における〝事実〟がどうなのかおぼつかなくなる感じ。
 すべては彼女の思い込み、それも意図的に自分の都合の悪いことだけを無視しているんじゃないか、という、その疑惑が最後の最後に効いてくるのが妙に小気味良かったです。