自主企画「SF考証手伝います!?」に参加いただきありがとうございました
- ★★★ Excellent!!!
※このコメントは、自主企画「SF考証手伝います!?」に関連したものです。
企画の都合上、作品を批評するような内容を含みますので、ご容赦ください。
なお、このコメントの末尾に、念のため、自主企画の企画内容をコピペしています。
<作品の感想>
作中では、Web上の投稿小説から、商業作品まで、様々な創作物の「定番」といえる「もの」や「こと」について、それがどんなことを示すか、あるいは、引き起こすかを議論・検討されていました。
まじめに幅広い現象を考察されており、知見の広さに敬服します。
<考証>
私がやろうと思っていることをより広く行われていらっしゃったので、
敬意を表して、可能な限り内容についてコメントを入れさせていただきました。
様々な作品を創り上げされている大先輩に対して、おこがましいかと思いますが、参考にしていただければと思います。
*「恐怖の時間停止」について
+赤方偏移について
作中で説明されていた内容は、おおむね正しいかと思うのですが、
「仮にこの状態で前進すれば、前方が明るく白っぽく見え、逆に前方を向いたまま後ろへ下がると、遠ざかる前方の景色は暗く赤っぽく見えるようになります。」との部分は、違うかと思います。
後の部分で説明されている内容を考えるに、時間停止を使った人が移動する速度は、光速に対して十分に小さいので、赤方偏移は、ドップラー効果によるものではなく、空間の伸縮によるものと考えることができます。
そうすると、重力の大きさが波長偏移に対して支配的なので、移動による変化は体感不能な程度なのではないでしょうか。
+地表付近での超音速飛行について
本文中で、「大気温度20℃でマッハ2を出したら機体表面温度は250℃にはなってしまいます。キャノピーは溶けだすし、中に乗ってる人は蒸し焼きになって死んじゃいます。」という記述がありますが、半分正しく、半分は怪しいかと思います。
キャノピーですが、ポリカーボネートの融点は250度程度ですが、実際に航空機用に利用している者は、超音速飛行時の断熱圧縮を考慮して設計されているので、溶けだすことはなさそうです。(具体的な融点などは出てきませんでした。もしかして、こういうのも機密情報なのか!?)
一方、地表付近では、主に地面効果や空気が「濃い」ことによる抵抗の増加が深刻な問題になりそうです。なので、カタログスペックの速度は到底地表付近では出せないということは、本文中のご指摘の通りになるのかと思います。
*レーザー光線は貫かない
+宇宙船を「レーザービーム」で爆発させられるか?
本文中では非常に綿密な議論がなされていましたが、宇宙船内は与圧されているはずですので、ある程度の気圧差は与えられるかもしれません。
この影響が爆発らしき現象を引き起こせるかは疑問ですが、一応ご指摘します。
+プラズマ砲は長距離射撃できないか?
こちらも本文中の内容は正しい議論がなされていると思うのですが、
いくつかの作品では、プラズマ砲はレールガンやコイルガンのような形式で発射されています。なので、プラズマの中心に、適切な磁場を発生させ拡散を防止するような「芯材」のようなものを入れることで、長距離射撃できるのかなと思いました。尤も、自分がプラズマで蒸発しないように一定の距離を取りつつ、拡散しないように磁場を制御するのは無理な気もしますが...どうでしょうかね?
*宇宙では煙はたなびかない
+煙の拡散速度について
作中で、「煙は一気に膨張して広がりすぎることによって粒子の密度が薄まり、すぐに消えて見えなくなってしまいます。」という表現がありました。
この内容について、実例があるので紹介させていただきます。
アポロ13号の事故では、宇宙空間で「爆発」が生じています。(厳密には、アーク放電をきっかけにしてタンクが破裂した事故なので、NASAの広報は爆発という言葉を使いませんでしたが。)
その際には、「宇宙船に搭載された2基の酸素タンクの一つが破裂し、300ポンド(約136kg)の液体酸素を宇宙空間に吐き出していた」。また、「酸素は大きな塊になって吐き出され、無重力のために球を形づくって、太陽光で輝きながら急速に膨張し、10分後には、直径30マイル(48km)にまで達した。やがて、この白い円盤は徐々に薄れていったが、それでもカナダの強力な望遠鏡からは、一時間たってもその痕跡が観測できるほどだった。」とのことです[1]
その現象は、地上で望遠鏡を使ってモニターしていた人々によって可視光で観測されており、「テレビ画面の中心近くに明るい光点があらわれ、それから10分ほどの間に、10セント硬貨ほどの白い円盤へとふくらんでいった。」というように表現されていました。[2]
これを見る限り、太陽光などの光があれば、知っている人が思っているよりも意外と見え続けるようです。
参考資料: アポロ13号 奇跡の生還 ヘンリー・クーパー Jr. 立花 立訳 新潮社
[1]: 15ページ
[2]: 14ページ
*超巨大戦艦は動かせない
+戦艦ヤマトについて
本文中で何度も触れられた戦艦ヤマトについて、
有名な話なので、ご存じかもしれませんが、米軍が大和を沈める際には、武蔵の撃沈時の経過を解析し、攻撃の最適化を行いました。
そのため、大和は、魚雷が片舷に集中するように攻撃を受け、転覆する形で沈んでいます。
参考のため、資料を探したところ、「戦艦『大和』の謎」(檜山 良昭著 KAPPA BOOKS)のP186-187に「大和に対する爆弾・魚雷命中概念図」というものがあり、そこでは、左舷に9発・右舷に1発の魚雷の命中があったことが記載されていました。
以上、少し私の専門とは違う部分もあるので、あやふやなことを述べてしまった感もありますが、コメントと議論を行わせていただきました。
ご不明な点やご指摘などあれば、返信いただければと思います。
※企画内容の再掲
自分で小説を書いてみて気が付いたのですが、科学をベースにしたまじめなSF(ハードSF)とかファンタジー(?)を書こうと思うと、
「この設定で、これぐらいの威力って正しいのか?」
「この計算、実は矛盾してない!?」
などなど、色々と悩むことがありました。
そこで、同じ悩みを抱えている方、このイベントに参加してください。
私のわかる分野であれば、考証の確認をします。
(査読付き学術論文の査読をご存じの方は、それをご想像ください。)
<受け付ける作品>
下記の分野のいずれかについて、設定を行い検討した作品
もしくは、検討が必要な作品
・物理学(古典物理学)
・数学(線形代数・応用解析・統計)
・信号解析
<補足と注意事項>
・もし特定の部分について注目して検討が必要な場合は、「近況ノート」にイベント参加の記事を作成し、検討が必要な場所をメモしてください。私が無事そのノートを見つけた場合は、そのノートにもコメントします。
・私の行った考察の結果は、作品の該当するエピソードにコメントする形で返します。
場合によっては、間違いを指摘するコメントを行うことになりますので、ご承知おきください。
・私はよく間違いを犯しますので、コメントの結果を過信しすぎないようにしてください。ご不明な点は、コメントに返信する形でご質問ください。(一応学位を持っている者ですが、同僚との議論でよくミスを指摘されます)
・処理能力に限りがあるので、コメントが大きく遅れる場合があります。
場合によっては、コメントをお返しできなくなる可能性もあるので、ご了承ください。(その場合も可能な限り、理由とともにその旨をコメントするようにします。)