自主企画「SF考証手伝います!?」に参加いただきありがとうございました

※このコメントは、自主企画「SF考証手伝います!?」に関連したものです。
企画の都合上、作品を批評するような内容を含みますので、ご容赦ください。
なお、このコメントの末尾に、念のため、自主企画の企画内容をコピペしています。


<作品の感想>
私が最近読んだSFの中でもトップクラスの面白さでした。このような素晴らしい作品が書けることに敬意を感じざるを得ません。
本作は、辺境の星をやむを得ない理由で離れた少女が、星間文明に触れる悲喜こもごもの出来事を描き出したものですが、様々な箇所で作者様の知識や知恵が見え隠れし、大変面白かったです。
穏やかで寂し気ながらも、未来への明るさが暖かさとして残る作風は私にはドンピシャでした。風景描写に関しても素晴らしく、シーンの情景やメカニックがはっきりと浮かび上がるものでした。
勝手ながら、過去の読書歴の中で類似作を上げるとすれば、エリザベス・コストヴァ著、高瀬 素子 訳の「ヒストリアン」と同じような雰囲気を感じました。

<考証>
いくつか気になる点はあり調べていたのですが、調べてみると正しそうなことが多くてびっくりしました。
特に面白いと感じたのは、重力制御についてでした。
36話で「海洋圏音響解析所」に降り立ったあと、デモンストレーションで、”エアロビスタ”が海面近くを低空飛行し、それにイルカが反応してジャンプするシーンですが、
最初は、仮にも航空機サイズのものを浮かばせるための重力制御なのだから、十分に広い範囲になだらかな重力勾配を与えて制御するはずで、それを考えると多少の低空飛行を行っても海中に与える影響は少ないだろうと思って考えていました。
しかし、よく考えてみると、航空機サイズのものを”ホバリングさせた”際にイルカは反応しています。
ここに注意すると、エアロビスタが空中で制止しようとする際のフィードバック制御により生じた、より短い時間スケールの振動するような重力波の変動が、イルカを引き付けたというようにとらえることができ、
これは、生物の計測系が緩やかな時間変動はノイズだと思って無視し、細かな変動を有意信号として拾う特徴があることとも整合的です。
このような、一見あれっと思うけれど、実はつじつまが合うようなことが多く、大変勉強になりました。

本作の連載は続いていますので、今後も楽しみに拝読させていただきたいと思います。



※企画内容の再掲
自分で小説を書いてみて気が付いたのですが、科学をベースにしたまじめなSF(ハードSF)とかファンタジー(?)を書こうと思うと、
「この設定で、これぐらいの威力って正しいのか?」
「この計算、実は矛盾してない!?」
などなど、色々と悩むことがありました。
そこで、同じ悩みを抱えている方、このイベントに参加してください。
私のわかる分野であれば、考証の確認をします。
(査読付き学術論文の査読をご存じの方は、それをご想像ください。)
<受け付ける作品>
下記の分野のいずれかについて、設定を行い検討した作品
もしくは、検討が必要な作品
・物理学(古典物理学)
・数学(線形代数・応用解析・統計)
・信号解析

<補足と注意事項>
・もし特定の部分について注目して検討が必要な場合は、「近況ノート」にイベント参加の記事を作成し、検討が必要な場所をメモしてください。私が無事そのノートを見つけた場合は、そのノートにもコメントします。
・私の行った考察の結果は、作品の該当するエピソードにコメントする形で返します。
 場合によっては、間違いを指摘するコメントを行うことになりますので、ご承知おきください。
・私はよく間違いを犯しますので、コメントの結果を過信しすぎないようにしてください。ご不明な点は、コメントに返信する形でご質問ください。(一応学位を持っている者ですが、同僚との議論でよくミスを指摘されます)
・処理能力に限りがあるので、コメントが大きく遅れる場合があります。
 場合によっては、コメントをお返しできなくなる可能性もあるので、ご了承ください。(その場合も可能な限り、理由とともにその旨をコメントするようにします。)