7話 告白?

 モリスが、ナンパしてきた女の子を紹介してきた後。

 俺らは、いまだに町の中に入らず道の上に立ったままだった。

 その道は、人通りもなくしずかな道。

 道は土で出来ていて、砂ぼこりがっている。

 そんな中、俺と女の子は向かい合っていた。

 

 その女の子は、年は大体16歳くらいで、清楚系せいそけい可愛かわいらしい子だ。

 そんな子をアニキに紹介できたと、モリスはドヤ顔を決めている。

 反対に、女の子は何やらこまった表情をしていた。

 ナンパをされて、無理やり連れてこられたのだろうか?

 とにかく、この場はものすごく重苦しい雰囲気だった。


 俺は、この状況にこまり女の子の方を向いたままだまっていた。

 俺と女の子の沈黙ちんもくは続く。

 静かすぎて、風の音まで聞こえるほどだ。

 そんな沈黙ちんもくやぶったのは、女の子の方だった。


「あ、あの。えっと……」


 なんか、モゴモゴ言っている。

 きっと、連れてこられて怖かったのかもしれない。

 もし、おびえているのなら後でモリスをしかるべきだろう。

 俺は、そんな女の子の緊張きんちょうをほぐすため、声をかけることにした。


「怖がらせてごめんね。

 言いたいことがあるなら聞くからさ! なんでも言っていいよ」


 女の子は、俺の言葉を聞くと安心した表情を浮かべた。

 そして、下を向き何かを考えだした。

 少しは、緊張きんちょうがほぐれたのかもしれない。


 そんな俺を見て、小さな声で「アニキカッコいいっす!」とか言っているモリス。

 俺は、茶化ちゃかしてくるモリスを無視して女の子からの言葉を待つ。

 すると、下を向きながらだまっていた女の子は顔を上げた。

 

「あ、あの。えっと……」


 再び、モゴモゴ言う女の子。

 その様子を見たモリスが、俺に話しかけてきた。


「アニキ。アニキに告白する気なんじゃないっすか?」


 モリスが、俺の耳元でささやくように言ってくる。

 俺は、アホなことを言うモリスに「そんな訳ねーだろ!!」

 って言ってやりたかった。

 だが、俺の中で何かが変化してしまった。


(もしかしたら、相手は自分のことが好きかもしれない)


 と、思ってしまったのだ。

 こうなると女の子の言葉と行動が、今までとは全く違く見えてくる。


 緊張きんちょうしてたのは、もしかした俺のことが好きだったからでは?

 だまっていたのは、告白の言葉を考えていたとか?

 モゴモゴ喋るのは、やっぱり緊張きんちょうしていたからか??


(そもそも。

 俺に紹介される事が分かって、モリスにナンパされて付いてきたんだもんな。

 もしかしたら、俺のことが気になったのかもしれない)


 そう思ったのだ。

 だが俺は、初めて会った人とその日に付き合う事はしたくない。

 なので、もし告白されたら「考えさせてください!」って言おうと決めたのだった。

 すると俺は、告白される覚悟が決まってきた。

 そして女の子の目を見る。

 すると女の子もまた、俺の目を見てくる。


(うわー!!!!! なんかめちゃくちゃ緊張きんちょうする!!)


 俺は、不思議ふしぎと心がドキドキしてきた。

 そして、しばらく見つめ合った後。

 女の子は、ようやく俺に話かけてきたのだ。 


「あ、あの!! えっと……」


 またしてもモゴモゴするが、俺は気にしない。

 告白とは、緊張きんちょうするものなのだから。

 俺は、女の子の言葉を待ってる間、返事の練習を頭の中でする。


(考えさせてください。

 考えさせてください。

 考えさせてください。

 考えさせてください。

 ……よし。準備じゅんび完璧かんぺきだ! さあ来い!!)


 準備万端じゅんびばんたんの俺。

 ようやく覚悟を決めたのか、キリっとした表情になっている女の子。

 その様子を見て、ニヤニヤしているモリス。

 誰もいない土の道の上で、風が吹く中。

 いよいよ運命の時間がやってきた。

 告白前の緊張きんちょうが場に広がった時。

 ついに彼女が口を開いた。


「この町を助けてください!!!」


 俺は、その言葉をちゃんと理解せずに練習していた言葉を女の子に言う。


「考えさせてください! ……は??」


 想像していなかった言葉に、俺の時間が一瞬いっしゅん止まる。

 

(え、え、いまさ。町を助けてくださいって言った??)


 あせった俺は、急いで聞き直す。


「聞き間違いだったらごめんね。

 今さ、町を助けてくださいって言った?」


「はい。 考えてくださり有難ありがと御座ございます」


 女の子は、やっと言えた喜びに顔の色を明るくした。

 そして、俺に深々ふかぶかと頭を下げてお礼をする。

 そんな女の子を見てこまる俺。

 全く告白ではなかったのだ。

 

(勘違いしてめちゃくちゃ恥ずかしいじゃん!!!

 チクショウ。モリスのせいだぞこれは)


 そう思い、俺はその気にさせたモリスをニラミつけた。

 すると、モリスも想像していなかったのか、口を思いっきり開き呆然ぼうぜんとしている。

 想定外そうていがい過ぎて、固まってしまったのだ。


(アイツ本気で、女の子が俺に告白すると思ってたんだな。

 もしかしたら、アニキに悪いことしたとか思いそうだし。

 あんまり攻めるのは、やめてあげよう)


 俺は、固まるモリスを見て許してあげることにしたのだった。

 そして再び、俺は女の子の方を向いた。

 すると、俺が考えると言ったのがよほど嬉しかったのか、とびきりの笑顔でこちらを見ていた。


(そんなに期待されてもな……。

 まあ今更いまさら断れないし、話しを聞くだけ聞いてみるか)


 俺は、そう決めたのだった。


 こうして。

 はかなく俺のラブストーリーは終わり、流れで町を救うか考える事になってしまったのだった――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最弱だからとパーティーを追放された俺は、隠してた力を解放して最悪の貧民街を最強の国にしようと思います。パーティーに戻ってきてくれ?いや、その前に跪け 見上大樹 @mikamitaiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ