6話 かつて住んでいた街

 1000人程の兵を倒し終わり、無事にモリスが復活した後。

 俺達は追手おってが来る前に、この場をはなれようとしていた。


「ちなみになんすけどアニキ? 行く場所は、決まってるんすか??」


「あぁ。決まってるよ!」


 俺は、事前に行く場所を決めていた。

 行き先は、俺にとっての思い出の場所だ。


「そおっすか! そこはどんな所っすか?」


「そこはね、俺が住んでた場所だよ!」


「アニキが住んでたところっすか! いいっすね!」


 昔、俺が住んでいた所は、逃亡者とうぼうしゃなどが最後に行き着く町だった。

 住人もげてきた人が多いので、みんなが守ってくれるのだ。

 今の俺たちに、ピッタリの町ということだ。


「そんな訳で、居心地いごこちも悪くないと思うよ!

 でももし、これから行く所がいやになったら俺に言ってな」


「大丈夫っす! 自分は、アニキとればどこでもいいっす!」


 モリスは、笑顔でそう言った。

 その笑顔を見て俺は、可愛かわい後輩こうはいを持った気分になった。

 

 すると何故なぜだか俺は、格好かっこうつけたい気分になってきたのだった。

 

「よし! じゃあ、せっかくだし俺の能力でそこまで行こう!」


「え!? アニキの能力っすか!? そんなことが出来るんすか!?!?」


 モリスは、すごくビックリした顔で俺に聞き返してきた。

 俺は、モリスのいいリアクションに気分を良くする。


「まあね!! じゃあ先に飛ばすから向こうで待っててね!」


 そう言い終わると、俺は、モリスに向けて右手をばす。

 そして、カッコよくつぶやいた。


『アポーツ』


 その瞬間。

 モリスが目の前から消え、目的地まで瞬間移動しゅんかんいどうしたのだった。


 モリスを見送った俺は、モリスと同じ所へと向かう。

 

(よし。じゃあ俺も行こう!)

 

『テレポート』


 その瞬間。

 その場から俺の姿も消えたのだった。




 ここは、目的の町の外にある、木がしげる森の中。

 モリスは、先に到着とうちゃくしていた。


「ホ、ホントに飛んできちゃったっす……ア、アニキすごすぎるっす」


 モリスは、俺のチートぶりにビックリしていた。

 俺は、そんなおどろいているモリスの前にいきなり登場した。


「お待たせモリス!」


「わっ!? ア、アニキ!? ビックリしたっすよ……」


 突然あらわれた俺に、おどろくモリス。

 俺は、どうやらモリスのおどろいた顔が好きみたいだ。


「俺の能力はどうだった??」


 俺は、モリスから「おどろきましたっす! アニキ!」みたいな反応がしくて聞いてみた。

 

(さてさて。どんな反応が来るかな!)


 俺が楽しみに待っていると、モリスが答えた。


「めちゃくちゃすごいっす! さすがアニキっす!!」


(よしっ! 100点満点の答えだよ! モリス!)


 俺は、モリスからの返答へんとうに気分がよくなった。

 ほめられて、ちょっと嬉しかったのだ。


「よし! じゃあモリス! 町を案内してあげるよ!」


「ありがとっす! アニキ!」


「おう!」


 俺は、笑顔で返事を返した。

 

(モリスがいると、楽しくなりそうだな!)


 俺は、後輩こうはいの様な。

 時に、友達のようなモリスを心底しんそこ気に入ったのだった。


 そうして、町の外にた俺達は町へ向かっていった。

 しばらく歩くと、門番もんばんのような人が立っているところが見えてきた。

 だが、何故なぜかそこには門番もんばんが立っていない。


「あれ? 昔は、人が立っていたんだけどな」


「へぇー。そーなんすね!

 ……それよりアニキ。誰かこっちに走って来てないっすか??」


 門番もんばんがいないのは不思議ふしぎだった。

 だが、それより走ってくる人の方が気になった。


「あれ、女の人だよね?」


「ハイっす! 結構可愛かわいい感じじゃないすか??」


 そう言ったモリスの顔は、気持ちの悪いくらいにムフフな顔をしていた。

 そしてモリスは、急にりだしてしまったのだった。

 

「自分が、どうしたのか聞いてくるっす!」


 そう言って、モリスはニヤニヤしながら女の人に近づいていく。

 見た目もヤンキーっぽいので、周りから見たらモリスはあぶない奴にしか見えないのだ。


(モリスの奴。まさか女好きだったとはな……。

 てか、アイツもしかしてナンパしに行ってないよね??)


 俺は、モリスが何かやらかしそうで、少し不安になった。

 だが、残念ざんねんながらその不安は現実げんじつとなる。

 

 うれしそうな顔で、戻ってくるモリス。

 真剣しんけんな表情で、こちらに向かってくる女の子。

 どうやらナンパは、成功したらしい。


 モリスは、その子をれて来ると、うれしそうに報告ほうこくしてきた。

 

「アニキ! ナンパに成功したっす! アニキとお話ししてくれるらしいっす!」


「はぁ!? 俺、話したいって言ったっけ!?」


「顔に書いてあったっす! 気持ちを読んで動いたっす!」


(この、お馬鹿モリスめ!! 俺がいつ話したそうな顔をしたんだよ!!

 てかこれじゃあ、俺が後輩こうはいを使ってナンパしたみたいになってるじゃんか!)


 俺は、モリスのせいでダサい男になってしまったのだ。


(……やばい。何とかこの誤解ごかいかなければ!

 ちがうんだ。モリスが勝手かってに……。

 とか女の子に言い訳しても、ダサいしな。

 てか、なんで俺がこんな事を考えなきゃいけないんだよ!!)


 俺は、こんな面倒な状況を作ったモリスを、するどい目でニラミつけた。

 だがモリスは、俺の目線に気付かずに良いことをした気分になってドヤ顔をしている。


(ア、アイツ。後で覚えとけよ!)


 俺は、後でモリスを怒ることに決めた。

 そうして、気持ちを切り替えてやっと女の子に向き合ったのだった――

 

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