第4話 冒険者ギルド

次の日の朝、おれは苦しくて目が覚めた。


『やっと目が覚めたか、早く着替えて行くぞ』

苦しい筈だよ、ブン太が寝てるおれの胸に乗っていたのだ。


「重いと思ったら、なに人の上に乗ってるんだよ、苦しくて目が覚めちゃったじゃないか」

『朝7時になったのにいつまでもフレンが起きないからな、目覚めるように乗ってたのだ』

「なんで時間が分かるんだよ、この部屋には時計なんてなかったのにさ」

『お主の腕時計を見たのだよ、着けてるの忘れているのか』


そうだった、仕事行く時の格好で巻き込まれたから着けてたままなの忘れてた。でも不幸中の幸いかな、なにせこの腕時計は◯◯SHOCK製で防水仕様のソーラー電池だから、余程の事がない限り壊れる心配は無いもんな。1日の時間は地球と変わらないみたいだし安心した。

ただしブン太が言うには時計なんて物、前の時は無かったから、面倒事になりたくなければ無闇に他人に教えたりはするなと言われた。でも他人からはブレスレットにしか見えないから大丈夫との事だ。


それはそれで良かったけど、もっと普通に起こしてくれてもいいんじゃないか。

それからおれは着替えて、次の日ゴルドーさんからお礼の大銀貨10枚を受け取った。


「フレンさん、何かお困りな事があったら頼ってください、それではお気をつけて」

此方こちらこそ、いろいろお世話になりました。この服も着心地が良いし動きやすいです。また服の事で相談したい時は寄らせて頂きます」

それからおれ達はギルドの方へ歩きだした。

ゴルドーさんの話ではこのまま進み、街の中央にある噴水に出てその向こうの右側に大きな建物が冒険者ギルドだそうだ。教えてもらった通り歩いて5分も経たない内にギルドに着いた。


ブン太はというとおれの隣に一緒に歩いていたが、ふと気づくと追従ついじゅうして歩くのが珍しいのか周囲の視線が集まっていたのですぐ抱えて中に入った。

その為ネコを抱っこしての形でギルドに入ったので中にいた冒険者達に指を差されて笑われていた。下手に関わると面倒事に巻き込まれそうなので気にせずに受付をだと思う場所に向かった。


「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ。受付のメーガン・リーズと申します。本日の御用はなんでしょうか」

ショートボブで淡いピンク色の髪型のお姉さんが元気な声で応対してくれた。


「冒険者の登録をお願いしたく来ました」


「分かりました。それでは登録料として大銅貨5枚頂きます。そしたらこの水晶に触れてください。するとこの登録証に名前・levelが刻まれます。それからこの登録証に触れてる間、各能力が表示されますのでご確認ください。もし第3者の手に渡っても本人が触れてなければ何も表示されないし、能力を確認してる時でもご本人以外は見れないので情報が漏れる事はありません。ギルド側としては名前とlevelしか確認出来ませんのでご安心ください」


「へぇ、盗難防止や覗き見防止機能が付いてるなんてずいぶん便利ですね」

おれは大銅貨5枚を渡し、水晶に触れた。すると水晶が光だし文字が刻まれた。


「はい、これで登録終了です。名前はフレン・レフィリアさんでレベルは5ですね。ランクは皆さんFからスタートしますので頑張ってください」


「分かりました、頑張りますね」

受付から離れながら考えた。ちょっと疑問だったのは生前のブン太の能力を引き継いだのにレベルが思ったのと違ったからだ。

『それにしてもレベルが低いな、ほれ早く確認するのだ』

ブン太が周りに聞こえないように小声で言ってきた。やはりブン太も気になっていたようだ。席が空いていたテーブルに座りブン太と一緒に確認した。

名前 フレン・レフィリア

レベル5

体力 2908

魔力 1984

攻撃 3090

防御 2101

俊敏性しゅんびんせい 1995

スキル 風魔法作成  アイテムボックス

槍術そうじゅつ…… 疾風突きしっぷうづき 列空突きれっくうづき 旋風一閃せんぷういっせん 双牙連撃そうがれんげき


従魔じゅうま 「ブン太」 従魔経験値共有



これは高いのだろうか?この世界の基準が分からないから判断出来ないと思っていたら


『レベルは低いが能力は一緒だな。スキルは幾つか足らないのもあるがわしが覚えていた一部だな。きっと調律者コンダクターが調整したのだろうな』


ブン太がいうにはレベルが高すぎると変に目立つから1からにしたんではないか。それが何故5だったのは転生前には無かった経験値共有っていうスキルの働きで、この街に来る前にブン太が倒したローウルフとオーク達の経験値でなったのだろうという事だ。能力も転生前より微妙に高いのもレベルが上がった影響との事だ。

ただ、アイテムボックスはブン太の時には無かったので、良いスキルを貰ったなと言っていた。風魔法作成ってスキルもブン太には初めて見るスキルらしく詳しくは分からないということらしい。

とりあえずFランクの依頼を受けて空いた時間で他の槍術のスキルと一緒に練習する事にした。

それで依頼書ボートの所に確認してきた。もちろんブン太を抱えてだ。

「どれがいいかな、Fランクで受けれるのは庭の掃除、指定の買い物、あ、これなら練習出来るな、薬草を5つ納品」

『そうじゃな、期限日までに納品すればいいから早めに採取して練習じゃな』

ブン太も賛成してくれたみたいだ。依頼書を持って受付に出した。

「薬草納品の依頼ですね、それではこの街の南門から出てしばらく歩くと森があり、薬草が生えていますので、今日から一週間後迄に納品をお願いします」


それからおれ達はゴルドーさんに教わった武器屋に向かった。外からでは分からなかったがお店に入ると奥行きがあり店内は槍が並んであるコーナーを見ていると店主が声を掛けてきた。


「あんちゃん、槍を探してるのかい?」

「そうです、先程冒険者登録したばっかりなんですげと、扱いやすいのはどれになりますかね」


槍は見て分かるのだが性能がまったく分からないので率直に聞いてみた。


「あんちゃん、登録したてなのに槍を装備するなんて珍しいな、登録したてばかりの奴らは大概は剣や片手斧、たまに弓しか選ばねぇから品揃えが悪いんだ。それで扱いやすいのだっけな。予算はどれくれぇだ?」


「そうなんですか、言われてみればあまり無いですね。一応、銀貨5枚から10枚でお願いします」


あまり安くてもすぐ壊れては話にならいから、最初の内はそれ位の値段なら妥当だろうとブン太と話しておいたのだ。


「銀貨10枚まで出すなんて、ルーキーにしては随分と金を持ってるんだな。んじゃこれなんてどうだい」


進められたのは矛先がシルバーウルフの牙、柄の部分は凄くしなるブエナの木の素材で出来てる、銀牙ぎんがの槍という物だ。値段は銀貨10枚、予算内ギリギリだった。


『なかなか丈夫そうでだし、最初はそれでよかろう』


ブン太が肩に乗り、小声でそう言ってきたのでおれはそれを購入する事にした。


「分かりました、この銀牙の槍を売ってください」

「あいよ、ま、がんばんな、あんちゃん」


おれは武器屋を出てそのまま南門に向かった。

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飼い猫のついでに異世界へ しし丸 @koromaru8055

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