エピローグ

後の祭

 脳震盪と多量出血で失なった意識を取り戻した時、ネット上にたむろしてるクソどもは、俺に「折角のチート能力を活かしきれなかったメスガキわからせ失敗おじさん」などと云うロクデモない渾名を付けてやがった。

 そして、翌日、自分が所属していた「自警団」の連中が病室にやって来て逮捕状を読み上げやがった。

 取調べの担当者は……それまで俺が格下だと思ってた奴らだった。

 台東区Site04内には俺を弁護してくれる奇特な弁護士など居なかった。

 大金を使って「本土」から呼んた弁護士は「Neo Tokyo」の裁判の流儀が良く判らず……そうじゃなくても、俺がしでかした事は余りに重大で……結局、俺は、自分で騷ぎを起こした現場である、この刑務所にブチ込まれる羽目になった。

 幸か不幸か、俺が起こした事件の証人の何人かは行方不明で、遠く離れた広島沖に有る渋谷区Site02W新宿区Site02E在住の証人達は面倒臭がって裁判には出席しなかったせいで……一応は有期刑で住んだが……俺の体の中には、刑務所側の判断で、いつでも俺を殺せるように小型爆弾が埋め込まれている。

 そして……。

「いや……あんたが、ほんのちょっとした失敗を安易な手で挽回しようとして、どんどんドツボにハマってたのまでは判った」

 刑期を短かくする為にやる事になった「社会奉仕」で同じチームになった「狼男」に身の上話をすると……奴は「わけがわからん」と云う表情かおになった。

 もっとも「狼男」と言っても、今は人間の姿に戻っている

「他の事でも良く有る事だろ? 事業で失敗した中小企業の社長とか芸能事務所の経営者とかが、借金を返す為に、安易な手で一攫千金を狙った結果……更にドツボにハマるみたいな……。でも……何で、ドツボにハマった結果、自分の部下を焼夷弾で焼き殺したんだ?」

「そ……そこは……その……えっと……」

 何でなんだ……?

 師匠の跡を継いで、「護國院」の院主になって、ほんの数ヶ月で面目丸潰れの失敗が2回。

 そして……汚名挽回が出来そうなチャンスがやってきたが……そこに何故か、俺の顔を潰しやがったメスガキどもが揃ってた。

 あとは……。

「まぁ、いいや……。自分で考えを整理してから、また話すわ。で、あんたは、どうして、ここに来たんだ?」

「ああ……俺は……久留米の安徳グループの2次団体の若頭でな……。上部組織の内紛の結果、警察に売られた」

「って、言うと?」

「上部組織の先代の組長が、母親が違う子供を何人もこさえてな……」

「なるほど……それが内紛の原因か……」

「ああ、色々と有って、千代田区Site01の『英霊顕彰会』とやらがやってた人身売買が……俺が関わってた事にされたんだ」

「そっちも、ややこしそうだな……」

「ま……娑婆に戻って、人生やりなおして……せめて、一度ぐらいは俺の息子に見直してもらえるようになるのが……今の夢かな?」

「なるほど……悪くねえ夢だな……。ところで、学者先生、あんたは何をした?」

「ええっと……その……ちょっと……」

「ちょっと何だ?」

「あるテロ組織から研究費をもらって、その組織が作った『脳改造人間』を使って人体実験をしたのが勤務してた大学にバレて……」

「なんか、あんたが一番ひでえ事をやったような気が……いや、待て、あんたの顔、見覚えが有るぞ……おい……あんた」

「あ……あの……」

「おい……まさか……あんたQ大の……あのセンセイか?」

「ええっと……」

「お……おい、どうした、落ち着け……」

「て……手前てめえが……手前てめえさえ、この東京に来なけりゃ……」

「だから、落ち着け、馬鹿」

「た……たすけて……すいません……うわああああ……」


『Neo Tokyo Site02E : Enter the Dragon Lady』『Neo Tokyo Site02W : Enter the Fat Dragon』(仮題)に続く(?)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Neo Tokyo Site04:カメラを止めるな! −Side by Side− @HasumiChouji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ