高木 瀾(らん) (18)

「ところでさ……何で、あのショベルカーやブルドーザーを『本土』の『正義の味方』が遠隔操作出来たんだ?」

 フェリーの甲板で海を眺めながら、関口はそう訊いてきた。

「いや、お前だって予想は付いてるだろ」

「判んねえから訊いてんだよ」

 あの工事車両の製造元は……高木製作所。「正義の味方」と深い関わりが有る企業だ。

 そして、高木製作所の製品の内、「正義の味方」関係に卸しているモノの製造番号シリアル・ナンバーには、ある特定の「パターン」が有る。

「あの工事車両の『持ち主』だった業者は……私達『正義の味方』のフロント企業だ」

「んな訳有るか。絶対にねえよ」

「いや、現実に……」

「だから、そんな訳ね〜んだよ。あの業者、私も良く知ってるとこだ」

「はあ?」

「あの業者が出来た時に出資したのは……私ら『入谷七福神』の創設者の内の2人だ。私らを港まで送ってくれた、あの2人だよ……」

 まさか……。

 いや……。

 この世界にインターネットの全貌を把握している者が居なくても、インターネットは機能する。

 地球上に世界経済をコントロールする何者かなど居なくても、経済は回っていく。

 私達「正義の味方」のネットワークも似たようなモノだ。指導者も中枢も……それどころか、ネットワークの全貌を把握している者さえ居なくとも……「組織」のように機能し続ける。

 自分の支部チームはともかく、隣の市の支部チームのメンバーがどこの誰か知らなくても、支部チーム同士の協力は可能だし、複数の支部チームが共同で大きな作戦を実行する事も出来る。

 それが、私達「正義の味方」だ……。

 つまり……どこにどんな「正義の味方」が潜んでいるか……「正義の味方」自身にも判らない……。

 ならば……もし、この世界が「正義の味方」を必要としなくなったとしても……「正義の味方」のネットワークだけは残り続け……思わぬ弊害を生み出すのでは無いか……?

 そして……もし……「正義の味方」のネットワークを模したテロ組織・犯罪組織が生まれたなら……その「組織」ならぬ「組織」を潰す事は可能なのか?

 私の脳裏に浮かんだのは……「正義の味方」のネットワークを抜けた、私の馬鹿父親おやじが、今、どこで、どんなロクデモない真似をしようとしているのか? と云う事だった。

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