エピローグ
夏の暑さが抜け、秋の雲一つない青く高い空が美しい。
ユースィフ、ジュード、ハーシム、アスアド、士英、ミシュアル、景興、明明、円覚の一行は、平安寺の墓碑の前に集まっていた。
周りでは、小狼が走り回っている。
一行は思い思いに筵を弾き、食べ物や飲み物を囲み寛いでいた。
「今日は一体何の集まりなんです?」
明明の言葉に、ユースィフは悪戯っぽく微笑む。
「それは、主賓が来てからのお楽しみさ」
「主賓?」
「ーーまたユースィフ殿の悪い癖が出た…。こんな子供まで焦らすとは」
景興の言葉に、ユースィフは思わず苦笑いをする。
「景興殿、そのうちあなたも慣れますよ」
ジュードの言葉に、景興は複雑な顔をした。
「それはーーあまり歓迎できない」
「ところがどっこい、いつのまにかこいつの無茶苦茶な行動に巻き込まれてるんだよなぁ」
ハーシムはまったく、と諦めたように言った。
景興は何事が言いかけたが、諦めたように口をつぐんだ。
どうやら、既にユースィフの性格に飲み込まれ始めているらしい事は、景興自身気が付いていないようである。
「まあ、とりあえず今は楽しんでくれ」
そう言うとユースィフはウードを手にし、ほろほろと楽を奏で始めた。
異国情緒の溢れる、艶のある楽の音が平安寺に響く。
ハーシムはそれを見て自らもセタールを手にすると、ユースィフのウードに合わせて楽を奏でた。
「良い音だ……」
アスアドがうっとりとしたように目を細める。
「ほう、大石の楽もなかなか良いの」
円覚はそう言って笑うと、酒をあおる。
「あなたは僧では無いのですか?」
士英の言葉に、円覚は大きく笑った。
「おれは生臭坊主だからな、良いのだ」
明明は、見たことのない大石の食事に興味津々ながらも、食べたことのないそれに躊躇していた。そして、思い切ってその中の一つを口に入れる。
「美味いか?」
「……!美味しい、です!」
明明は笑顔でそう答えると、他の物にも箸を伸ばした。
ユースィフは、ウードを奏でながらそれをニコニコと見つめている。
「ところで明明」
「はい?」
明明は食べた事のない食事に夢中になりながらも、ユースィフの問いかけに応える。
「オレとの約束を覚えているか?」
「えっと…怪異が収まったら、絵を買ってくださるって言うお話、ですか?」
「そうだ」
ユースィフはウードを爪弾きながらも、明明へ身体を向けた。
「多分、今日のこれで怪異は収まるはずだ。そうしたら、君の絵を売ってくれるかい?」
明明は箸を置くと、真剣な眼でユースィフと向き合う。
「はい。お約束でしたし、ぼくもありがたいです」
「そうか、それは良かった」
「ーーですがーー」
少し眉根を寄せた明明に、ユースィフは優しく質す。
「どうした?何か心配事でもあるのか?」
「ぼくは、見たままを描いていただけです。だからーーこの怪異が消えたら、同じ絵を描けるかどうかは分かりませんーー」
明明の正直な告白に、ユースィフは笑顔を向けた。
「同じじゃなくてもいい」
「え?」
「君が描きたいものを描いたらいいんだ」
ユースィフの言葉に、明明は言葉を失った。
今まで『怪異が起こると噂の絵』以外の絵は売れた事がないのだ。
怪異が起こるからこそ、売れていると思っていた。
「ぼくの描きたいもの?」
「そうだ。何でもいい。空でも、花でも、人でも」
ユースィフの言葉に、明明は混乱する。
一体何を描いたら良いのか、突然判らなくなってしまったようだ。
「ゆっくり考えたらいい。オレは『怪異の出る絵』ではなくて、『君の絵』に惹かれたのだからな」
「ーーはい」
ユースィフの言葉に明明はそう言って頷くと、にっこりと微笑んだ。
「ところでーー」
明明とユースィフの商談が一区切りしたところで、ハーシムがセタールを弾く手を止めるとユースィフへと向き直る。
「そろそろ、明明の能力について説明してくれ。どうせ目星付いてんだろうが」
ハーシムの言葉に、ユースィフはウードを膝の上に置くと頷きながら一同を見回した。
「まあな」
「ぼくの能力?」
言われた明明が、キョトンとした顔でユースィフを見返す。
「あの、それはどういうことですか?」
「そうだな。明明の為でもあるし、説明しようか」
ユースィフはそう言うと、ウードを脇に置いた。
「明明、きみは鬼眼という目を持った見鬼だ」
「鬼眼?見鬼?」
明明は訳がわからないと言った様子で、目を白黒させている。
「鬼眼とは、普通の人間には見る事ができないものを見る事ができる、特別な眼で見鬼とは、その鬼眼を持つ者のことだよ」
「ええと……」
ユースィフは手のひらを上に向け、小さく呪を唱える。
すると、ふわりと小さな風がユースィフの手の上で巻き起こった。
「例えば、今君にはこのオレの手の上に何が見える?」
「手の上、ですか?…なんていうか…優しい淡い光が見えます…」
明明は、見たままを答えると、答え合わせを求める様にユースィフに視線をやった。
「ジュード、お前には何が見える?」
ユースィフはそれには答えずに、ジュードを見やる。
「ただ、小さなつむじ風が起こっている様にしか見えません」
「え?!」
明明はジュードの言葉に驚くと、もう一度ユースィフの手のひらを見る。
やはり明明には白い様な黄色い様な、暖かい光が見えている。
「アスアド、お前は?」
「おれも同じです。風が舞っているようにしか見えません」
アスアドの言葉に、明明は再びユースィフを見た。
「聞いたろう?この光が見えているのは、魔術師と、鬼眼をもつ見鬼だけなんだよ」
ユースィフは手のひらの光を消すと、明明に微笑む。
「つまり…ぼくには他の人には見えないものが見えている、と言うことですか?」
「そうだ。そして、その能力はとても貴重で、素晴らしいものだ。しかしーー」
ユースィフはそこで言葉を区切ると、少し真剣な目をした。
「使い方を間違えれば、自分を苦しめることになる」
「え?」
明明の顔が少し強張る。
「今お前は、全て無防備に、何でも見えてしまっている状態にある」
今まで黙っていたハーシムが、不意に口を挟む。
「だから、見たいものだけみて、見えなくていいものは見ないように訓練しなくちゃならん」
「訓練…?でも…どうしたら…」
ハーシムの言葉に、明明は困ったように眉を寄せる。
「…心配すんな。おれが教えてやる」
「え?」
「制御の方法は、特別におれが教えてやるよ」
ハーシムはぶっきらぼうにそう言う。
だが、それが照れ隠しであることは誰の目から見ても明らかだった。
「もしかして…蛤先生も…」
明明の言葉に、ハーシムはその眼帯を取る。
赤い、炎のような瞳が揺れた。
「ああ、おれも鬼眼を持ってる」
「!!」
「だから、心配するな。いずれ制御出来るようになる」
ハーシムの言葉に、明明はペコリと頭を下げる。
「あの…お願いします!!」
「ああ。まあ……士英が居なきゃ教えられないんだが」
ハーシムの言葉に、通訳をしていた士英が微笑む。
「明明さんとハーシムさんのためなら、お力をお貸ししますよ。きっと、賢い明明さんは、制御が出来るようになるまでそう長くはかからないでしょうしね」
士英の言葉に明明が嬉しそうに笑った。
「そういえば」
ふと、気が付いたようにアスアドが言う。
「明明が魔術師でないのなら、一体誰が絵に魔力を込めたんだ?」
「そうです、わたしもそれが聞きたかった」
アスアドの言葉に、景興も頷く。
「しかも、怪異が起こる絵と、起こらない絵があった…」
「それについては、別々の話になる…」
ユースィフはそう言って果実水を一口飲むと、まずは明明を見た。
「まず、怪異が起こる絵と、起こらない絵について。これは原因が明明にある」
「え?!ぼくですか?!」
明明はまったく身に覚えのないことに驚く。
「明明はとても能力の高い見鬼だ。だから、見たもの…怪異を絵にそのまま写し込んでしまった。それが怪異が起こる絵だ」
「……!」
ユースィフはそのまま続ける。
「しかし、自分の絵で怪異騒ぎが起こり、罪の意識に駆られた」
明明はごくりと唾を飲んだ。
「だから、怪異騒ぎが起こった後の絵には、怪異を写し込みつつも、それが表に出ないように無意識のうちに封印をしたんだ。それが、怪異が起こらない絵だ」
「そういうことか」
ハーシムが得心したように唸る。
「それを、わたしが解いてしまったと」
「うん」
「……ぼくに、そんな力が…」
自分の手を見つめる明明を見やり、ジュードが問う。
「では、一体その怪異を起こしていた張本人は誰なんです?」
それについては、とユースィフが墓碑を振り返った。
「本人から説明してもらおうーー」
ユースィフが振り返ると、ふわりと風が吹く。
今までの生暖かい風と違い、柔らかで爽やかな風だった。
次第にもやが出て、それはゆっくり人の形になってゆく。
陸曄と羊桂英だ。
初めて二人を見たミシュアルと円覚は目を丸くした。
「ほう、これは件の絵のままではないか!」
円覚はそういうと、上機嫌で酒をあおる。
ミシュアルは何かを言おうと口を開きかけたがやめ、二人に注目した。
『皆様ーー、この度は誠にありがとうございました』
陸曄がそう言うと、丁寧に頭を下げる。
『簪も取り戻していただき、ありがとうございます』
引き続いて羊桂英が頭を下げる。
二人は顔を上げると、目を見合わせた。
『怪異の件は、わたしの口からご説明申し上げますーー』
そう言うと、陸曄は自らの話をし始めた。
『わたしが自分の魔力に気がついたのは、十歳の時でした』
ある日、陸曄はふと外の風景を見た時、風もないのに揺れている木の葉を見つけた。
それはとても不思議な光景で、陸曄はそれをずっと眺め続けていた。
また、ある日は大好きな羊桂英を虐めている子供を見かけた時。
その子供が転べば良いのに、と思った矢先にその子供が転んだ。
そんな事が幾度か続き、陸曄は父親の書斎で書物を探している時、たまたま目に入った書類に自分と似たような力を持つもののことが記載されていることに気がつく。
陸曄は何をしても平凡な自分の秘めた力に心を躍らせたがしたが、それは次第に落胆へと変わっていった。
他人には内緒で自分の力を調べていけばいくほど、自分の力は大した事がないと分かったからだ。
自分にできることといえば、せいぜい小石を転がして人を転ばせたり、風で木の葉を回せたりする程度。
しかし、書物の中の魔術師は炎の龍を出し、風で岩を砕き、雷で地を掘る。
自分ができることと書物の中の魔術師との違いに、躍らせていた心はどんどん萎んでいった。
やがて、陸曄は自分が魔術師であるという事を隠し、本人もそれを忘れようとしていく。
幸い、平凡な自分ではあったが、恋人の羊桂英との仲は順調だったし、それ以上に望むものもなかった。
しかし、そんな折、羊桂英が後宮に上がることとなってしまうーー。
陸曄は、その時ほど書物の中の魔術師になりたかったことは無かった。
あの力があれば、桂英を取り戻せるのに。
だが、ないものをねだっても仕方がない。
陸曄は自分でもできる計画を立てた。
『しかし、それは皆様もご存知の通り失敗に終わります』
陸曄は静かに言った。
『わたしの命は、あの時ーー桂英を攫うと決めた時に、無くなったのと同然でした。しかし、桂英の命まで無くしてしまうなんて、考えていなかったのです』
陸曄はそう言って目を伏せる。
『あの時のわたしは、桂英を取り戻したいあまり、余りにも自分勝手だった』
目を伏せる陸曄に、羊桂英が手を重ねた。
『わたしが死んで、桂英がわたしの後を追ったと知った時、わたしは激しく自分を呪いました。こんなはずではなかったと。ーー今更です』
陸曄は目を伏せたまま話を続ける。
『そして、桂英の亡骸は周宗皇帝のゆかりの寺へ埋葬され、その簪は悪縁のある華潤宮に祀られました。死してなお、周宗皇帝によって私たちは離れ離れになってしまったのです』
陸曄と羊桂英はその視線を重ね合わせると、手を取り合った。
『わたしは、少ないわたしの魔力を使って、何とか誰かに伝えたかった。わたしたちを一緒にしてほしいとーー』
「そこで現れたのが、見鬼だった明明というわけだな」
ユースィフの言葉に、陸曄は頷く。
『その通りです。今までの者は、わたしの姿が見えても、ただの亡霊としか思わなかった。何かを伝えたいとは思ってくれなかった』
「ぼくがーーお役に立てたのでしょうか」
明明の言葉に、陸曄は頷く。
『明明殿はその目とその手で私たちのことを世に知らせてくれた。そして、それを解決してくれる術を与えてくれた』
言いながら、陸曄は深々と頭を下げた。
『感謝をしております』
『そして、簪まで取り戻していただきました』
羊桂英はそう言って髪から簪を抜くと、それを胸に大切そうに抱く。
『この簪は、阿曄が結婚を約束してくれた折にくれたものなのです。わたくしはこれを、婚儀で飾るのを楽しみにしておりました』
「そんなものを、結界なんぞに使ってすまんな……」
円覚はそう言うと、頭をかいた。
『いえ、円覚さまや東明寺の皆様に何の恨みもありません。むしろ、簪ををお返しいただくことに助力をいただき、感謝しております』
「そなたらはこれで未練もなく、成仏できるのか?」
円覚の言葉に、二人は顔を見合わせた。
『その事なのですがーー』
『この後に及び、大変厚かましい願いではございますが、我々二人の魂を見送っていただけませんでしょうか』
二人の願いに、景興は困ったように二人を見る。
「それは、いったいどのようにすればーー」
景興の言葉に、ユースィフは微笑みを浮かべる。
「二人の心残りは、二人の婚儀が行われなかったことにある。だから、今日はここでオレたちが二人の婚儀を執り行うのさ」
「それで、宴なのですね」
ジュードはやっと得心したような顔で頷いた。
「そうだ。景興殿、頼んでいた詩はできたか?」
「ええ、完成しました」
景興にとって、二人の悲恋の物語を追体験できたのはとても貴重な経験だった。
自分はここまでの恋愛ができるだろうかーー。
そんなことをほろほろと考えていたら、詩が空から降ってきたのである。
「では、披露してくれーー」
「わかりました」
景興は、言いながら朗々と詩を読み上げ始めた。
あなたの声は楽の音より美しい。
あなたの姿は牡丹の花より美しい。
あなたの心は金剛より美しい。
あなたの声が楽となって響く時、わたしは鳥となってあなたの周りを飛ぶだろう。
あなたの姿が牡丹の花となって香る時、わたしは蝶となってあなたの花弁に留まるだろう。
あなたの心が金剛となって煌めく時、わたしの心は光となってあなたを照らすだろう。
あなたのそばには常にわたしがいる。
わたしのそばには常にあなたがいる。
わたしたちの魂は、これからも永遠に二人で一つであるのだから。
ザァと風が吹き、二人の姿がやがて婚儀の装いになって現れる。
二人は手に手を取って、微笑んだ。
思わず明明は筆を取り、その幸せそうな二人の姿を写しとる。
その姿は美しく、まるで幸せが溢れてこぼれ落ちそうな神々しさがあった。
ハーシムが楽を鳴らすと、どこからか季節外れの花びらが現れ二人の周りを舞う。
ユースィフはその指先を唇に当て、静かに低く呪を唱えた。
ふわり、と風が舞い、空から黄金の光が二人を照らす。
二人はその光を見上げると、微笑みあって手を握りあった。
『ありがとうございます』
『この御恩は決して忘れはしません』
ユースィフは軽く頷くと、その指先を唇から離しフッと息をかける。
「ーーあれは何をしているんです?」
景興の言葉に、ジュードが静かに答えた。
「御霊送りですよ。ユースィフ様の唯一魔法ですーー」
「御霊送り?」
「我々法力を扱う者が霊を成仏させる場合、相手の意思とは無関係に強制的に魂をあの世に送ってしまいます。この世に未練があろうとなかろうと、ね。しかし、ユースィフ様は霊達が自らの意思であの世へ行けるように、道筋を作る事ができる。それが御霊送りです」
「なんとーー」
ユースィフの息がかかると、二人の姿はふんわりと空へ舞い上がる。
それはだんだんと薄くなり、緩やかに消えていった。
明明は、夢中で二人の絵を描いていた。
その絵の二人は美しく幸せそうで、見ているものまで幸せが訪れそうな絵であった。
その後、明明は幸せそうな二人の絵を描き続け、それが永泰では『新婚に幸せを運ぶ絵』として話題になり、一躍有名画家となった。
明明の絵は、新婚の二人に贈る品として主流になり、その後も大いに売れた。
翌日、交渉の全てを済ませたユースィフ達は通りを歩いていた。
「何にせよ、一件落着というわけですね」
ジュードの言葉に、ユースィフは「ああ」とどこか気のない返事をした。
「ユースィフ様?」
「ーーああ、いや。すまん」
ユースィフはそう言うと、大通りで見せ物をしている胡服の方士に視線を戻した。
「ほうれ、芽が出るぞ!芽が出たぞ!」
ユースィフの視線の先では、方士が植瓜の術を披露している。
「次は花が咲く!花が咲いた!」
あれよあれよといううちに、土から瓜の芽から蔓が伸び、花が咲く。
「瓜がなる、瓜がなる…瓜がなった!」
気がつけば、方士の手には大振りの立派な瓜が握られていた。
「おお、なんと!」
「素晴らしい!」
人々の感嘆の声が聞こえる。
不意に、その方士の視線がユースィフのそれとぶつかった。
まるで時が止まったようにその二人の視線は絡まって、解けない。
ふと、その方士の目がニイと笑った。
その顔は、表情こそ判るものの、まるで特徴がなく、目と鼻と口が記号のように付いているだけで、まるで人形のようだった。
明日、どこか別のところであったら気がつかないかもしれない。
あたかも、わざと何かの力で自分の特徴を隠しているような不自然さを感じる。
いや、この異質な感じはーー。
「ユースィフ様!」
アスアドに呼ばれ、はたとユースィフは意識を戻した。
「あの、大道芸がどうかしたのですか?」
「ーーいや」
既に、方士の視線は自分から離れている。
ユースィフは軽く頭を振ると、もう一度方士を見る。
その何の特徴もない方士は、再び植瓜の術を披露して瓜を売っていた。
その風景には何の違和感もない。
ユースィフはゆっくりとその方士の横を通り過ぎる。
『ーーまた、どこかで遊ぼう』
突如、頭の中に響いた声に、ユースィフは勢いよく振り返る。
しかし、もうそこには先程の特徴のない方士の姿はない。
人々の輪の中心では、先ほどユースィフが見たのとは別の年老いた方士が次の幻術を披露し始めていた。
「ユースィフ様?」
「ふ…ふははははは!」
「どうしました?!」
突如として笑い出したユースィフに、アスアドとジュードが焦ったように主人の顔を覗き込む。
ーーまったく、世の中には面白い人間が沢山いる。
ユースィフはそう思うと、焦るアスアドとジュードを他所に笑い続けた。
ー 第一巻 永泰の夜 終 ー
龍の王〜Lord of Bahamut 〜第一巻 朝比奈歩 @ashvenus
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