不気味な読後感がじわりとあと引くホラー

 高校二年の少年が、予備校からの帰り道、道端に落ちていた女性の頭を拾ってしまうところから始まる物語。
 謎めいた雰囲気と不気味さが光るホラー作品です。何か露骨に怪異のようなものが登場するわけではなく、「女性の頭の落とし物(すぐに精巧にできた人形の頭部と発覚する)」を除いては、非常に淡々と進むお話。なのですが、それでもじわじわと滲むような不気味さというか、「間違いなく普通ではない」と感じさせてくれる空気が非常に独特でした。
 キャッチコピーに「GL友情物語」とある通り、実質的に本作は、人形作家の女性・江角さんとその友人の物語です。にもかかわらず、偶然関わっただけの第三者である少年の目を通して語られているのが魅力的。この構成のおかげで、最終的にどこまで行っても不明瞭な部分が残るというか、想像するより他にない謎のようなものが残って、この余韻がとてもホラーらしくて印象に残ります。
 正解が判然としないが故の恐ろしさと、でも知らずに済んだからこそ、という不思議な安堵感のある、短いながらも濃厚な雰囲気のホラーでした。