コールドスリープ

『プシュー!』

コールドスリープマシンから白いガスが吹き出した。

「おい!遂に本部長が目覚めるぞ!」

課長の声に、我々は事務所の角に置かれたマシンに駆け寄り、そして固唾を呑んだ。

それは本部長が日焼けマシンと間違ってコールドスリープマシンに入り、丁度20年が経過した時の事だった。

マシンは上に置かれたコケシや鮭を咥えた熊等の民芸品をガタガタと落としながら、その扉を開いた。

ビキニパンツ一丁の本部長は、ぼんやりと中空を見つめた後、ゆっくりと上体を起こしマシンの縁に腰掛けた。

「はぁ〜…」

本部長は、深いため息をついた。

「本部長、お久しぶりです。大丈夫ですか?」

そう声を掛けた課長の顔を一瞥すると、本部長は「はぁ〜〜…」と更に深いため息をついた。

そして、またマシンに横になり向こうを向いて体を丸めた。

するとマシンの扉が閉まり、本部長はまたコールドスリープに入ってしまった。

扉が閉まる直前「…あと5年だけ寝させて」という小さな声が聞こえた。

我々は思っていた。

一般の会社員は土日の2日間が休みというだけで、辛いブルーマンデーを迎えるのだ。

それが本部長は20年間も休んでいたのだ、憂鬱で二度寝しても仕方ないではないかと。

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ミッドライフクライ司寿 塩塩塩 @s-d-i-t

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