第2話 多彩な正義

「ふぅ」

アレスは一息をついた。逃げ出した黒装束の内、1人はつかまえたが残った2人は逃げてしまった。


周りにはやじ馬がちらほらと集まってきている。

とりあえず縛っておくかとアレスが思った時、


「アレス」

現場についたルイスが声をかけてきた。

アレスを見た後、

足元で気絶している黒装束の人物を見て、はっとした様子だ。


「この人が襲撃事件の犯人?」ルイスは視線を黒装束に向ける。


「そうだ、2人逃げられたけどな」




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




アレス達は犯人を縛り終えた後、見物人に騎士を呼んできてもらい、黒装束を引き渡した。

アレスとルイスの2人は歩いて管制室へと向かっている。


「今回は室長も褒めてくれるんじゃない?」


「どうだか、あのオッサン俺の事好き過ぎるからなぁ」


「あらそうなの?私は大嫌いだと思ってた」


「期待の裏返しってやつさ、ほら俺優秀で女の子にもモテるしさ」


「彼女いない歴は?」


「18年だが」

アレスは真顔になった。




話している内に管制室に着き、室長室で報告をした。



「2人ともよくやってくれた」

室長が高そうな椅子に座っている。


室長は、年齢40歳代、身長160cm、体型は腹がポッコリしていて、頼りない髪を7:3にわけている。

服装は白いシャツに茶色のベストを重ねている。


「いえ、私は何も。アレスが1人で制圧してましたので」

ルイスが直立不動のまま答える。


「ありがとうございます」

アレスは軽くお辞儀をする。


「臨時報酬がでるかもしれないな、今日はもう帰っていいぞ。ゆっくり休みたまえ」いつになく上機嫌そうに労ってくれた。


2人は室長室を出て、家路につく。



翌朝、アレスが管制室に着くとすぐに室長室へと呼ばれた。


室長が渋い顔をしている。

「アレス、君はクビだそうだ。ついでに言うと国外追放らしい」


「は?」アレスはまのぬけた声が出た。


室長は、ポンと新聞をデスクに投げ置いた。


見出しには

『捕まえた人物、襲撃犯と繋がりか』と書いてある。

アレスは奪うように新聞をとる。


「お、俺、いや自分が襲撃犯と繋がり?めちゃくちゃだ」

アレスは怒鳴り声をあげる。


「俺に怒鳴らないでくれ」室長は苦しそうにうめくと「それに脅しもかけられた」としぼりだしたように言った。


「脅し?」


「俺だって抵抗したんだ。こんなのおかしいって。だが大臣まで出てきてアレス、お前を処刑にしてもいいのだぞと言ってきおった」


「処刑・・・・」


「この処分を受けなければ、次は実名で新聞にのるそうだ」


おもい沈黙が室内を支配する。


もともと辞めるかどうか悩んではいた。

冒険者になって自由になってみたいとも。

でも、まさか犯罪者のように国から追われるとは・・・・。


「室長が案外いい人だって気づけてよかったわ」


アレスはそう言って室長室から出ていった。 

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エイジリアン大陸物語 札幌 @matomaru14

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