エイジリアン大陸物語

札幌

第1話 秘密は2つある

室内は緊張感に包まれている。


レイアー国首都メンディスの中央部にある管制室だ。


メンディスは今、2つの話題でもちきりになっている。

テロ犯による破壊活動と、2年に1度開催される勇者選挙だ。


魔法による破壊活動が頻発しているため、管制室にはすぐ駆けつけられるように何人か待機していた。


その中の1人、年齢は20歳長い金髪で大きい目が印象的な女性、

ルイスがいた。彼女は暗めの青色のチュニック、黒色のボトムを

はいている。その上から軍の標準装備である、鉄の胸当てと鉄の小手を装備し、腰には細身の剣が吊り下げられている。


ルイスは新たに新設されたユニット部隊を中心とした軍の部隊、アライアンス部隊に所属している。

テロ活動対策のために管制室に派遣されているのである。


ドォーン

時刻は午後10時をまわったあたりメンディスに爆発音が響く。


「D地区です」管制室職員の若い女性が声を張り上げた。


「アレス行くわよ・・・ってあれ?」

ルイスは、いつもなら壁に寄りかかって立っていたはずの男、アレスに言ったはずだったが、そこには誰もいなかった。



アレスと呼ばれた男、年齢は18歳、身長は180cmのがっしりした体型で、黒髪と漆黒の瞳が特徴的である。

白の半袖のシャツに、薄い水色のボトムをはいている。

革の胸当て、鉄の小手、腰にはショートソードを装備している。

彼も襲撃事件に備えていた。



本来なら管制室にいなければならないのだが、アレスが待機していたのは屋根の上。攻撃魔法が使われればすぐ発見できるし、アレスなら身体能力上昇の魔法を使って屋根伝いに現場に向かえる。


ドォーン

闇夜に炎の爆撃音

「オレって天才!!」

アレスは一見すると不謹慎とも取られかねない笑みを浮かべ、爆発した所へ屋根伝いに走り出す。


ドドゥン 

今度は複数音。

アレスはすでに100m付近まで迫っていて複数の黒装束の人影を捕捉している。



黒装束がいた場所は人気のない市場の裏路地であった。

店の囲いを破壊しているようだ。

「よし、そろそろ逃げるぞ!」

黒装束の一人が仲間に声をかけて逃げ出そうとしたとき、


「ストーン!!!」

建物の屋上からアレスが魔法を放つ。

狙いは魔力水晶を持っている人物。


魔力水晶はある程度の時間魔力をためる事ができ、魔力が足りない、若しくは魔力を素早くためるのが苦手な人が水晶から魔力を補充しながら唱えるものだ。


ドゴォ。

10キロ級の岩が黒装束に的中して意識を失い倒れた。持っていた魔力水晶も衝撃で砕け散る。


アレスは屋根の上から、黒装束の逃げ道に立ち塞がるように着地をして、ショートソードを構える。


「誰だおめぇは」

黒装束の男が叫ぶ。ジリジリと腰が引けながら後退る。


「テンプレ台詞には何も答えるなと、じっちゃんが言ってた」

アレスは言ったが、じっちゃんに会った事はない。


残った黒装束の人数は3人。

黒装束達の獲物は、短剣1人にショートソード2人。


アレスにとっては1対3と人数不利である。

だが、魔力水晶に頼らなければファイアボール撃てない連中だ。

軍養成学校を首席で卒業したアレスの敵ではない。



だがここで、アレスにとって予想外の事がおこる。


「にげろぉおお」黒装束の1人が叫ぶと、ちりじりに走りはじめた。


「げっ」アレスは、黒装束達が逃げるとは思わなくて油断していた。

このままでは逃げられてしまうとアレスが思ったそのとき、



『それ』がきた。



いや、正確にいうとアレスが『それ』の世界に入ったと表現したほうが近い。

『それ』の世界は、時がスローモーションのようにゆっくり流れる。それはアレスも例外ではなく、アレスもはやく動くことができない。


ただ、アレスは『それ』の世界にいる間、思考速度だけはいつも通りだ。

アレスは『それ』の世界を、ゾーンとよんでいる。


ゾーンにいる間、アレスは頭の中でストーンの詠唱を終える。

そして、ゾーンが解けてから

「ストーン!!」

アレスが魔法を解き放つと、逃げはじめた黒装束の一人に命中し、黒装束は気を失った。




アレス自身、ゾーンが魔法かどうかわからないでいた。

アレスはゾーンを好きな時によべない。突然、前触れもなくゾーンが展開されるのだ。

少なくとも今までこんな魔法はみたことも聞いたこともない。


アレスはゾーンの存在を誰にも教えていない。

もしゾーンが魔法だとすると、無詠唱でこの規模の展開していることになる。

それは人類にはできない事である。

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