第1話:入学

四月九日、七時。青井家—


 青井美希は、明るい玄関にいた。

足を入れたスニーカーはひんやりと冷たい。背筋が伸びるような気持ちで靴紐を結んだ。

今日から高校生活が始まる。


「行ってきます。」


そういきおいよく言って、外に出た。


 中学の人がいない高校を選んだ。はずだった。

入学式の日、初めて入った教室へ入る。

がやがやとうるさい教室。いくつかのグループができていた。入学式の時は緊張でじっくり見れなかったので、今クラスを見回す。

 あっ。あの子も一人だ。と思ったが、その子は倉持光だった。中学の時のバレー部のマネージャーだ。よりによって…バレー部…

と思っていると隣の人が話しかけてきた。


「何中出身?私、○○中。花奈って言います。」


少し照れながら話しかけてくれた、坂下花奈。すごく背の高い女の子だった。


「△△中。美希…です。」





放課後、花奈と話しながら、昇降口へ行く。


「ねー、みき。部活なにかやる?」


「うーん。やらないかもな~。」


「私、中学校でバレーやってたの。」


バレーという言葉に妙に緊張した。


「△△中ってバレーめっちゃ強かったよね?みき、リベロでしょ?」 


ドキッとした。なぜか緊張している。 


「あ…知ってたの~?バレーやってたんだけど、高校ではもうやらないかなあ。」


必死に作り笑顔を向ける。ちゃんと笑えてるかな。


花奈は気にした様子もなく、「一緒に見学行こ‼」と私の話を聞かずに手を引っ張った。


放課後は部活の勧誘がすごかった。


「こんにちは。テニス部です。今から一緒に見学行きませんか。」


「あ、ちょっと今からバレー部に行くんです。」


花奈ははきはきと周りの部活の勧誘を断りながら体育館のほうへ向かっていった。


体育館へ行くと、床を打つボールの音、シューズのなる音が聞こえてくる。なつかしいと感じていると、こんにちは。と後ろから声をかけられた。

白いジャージを着た女の人が立っていた。すごくきれいな人だ。


「バレー部の見学できました。」


花奈は初対面の人にもお構いなしで話しかけていく。


「私バレー部のマネージャーなのっ。」と少し弾んだ声でいうこの女性のあとについて、体育館に入る。


体育館の隅で座って練習を見てる。


「なんで、もうバレーやりたくないの?」


花奈が聞いてきた。


全中予選、決勝で私たちのチームみてないの⁉私、プレーさせてもらってないんだよ⁉リベロのくせにボール拾えなかったんだよ⁉仲間に信頼されてないんだよ。そう言おうと思ったが、声が出なかった。

 

「言いたくないなら、いいよ。いえるようになったら聞かせてよ。」


花奈は優しい。仲良くなれる気がする。

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君の夏(仮) @Aoiuta

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