君の夏(仮)

@Aoiuta

第0話

全中をかけた県予選。決勝。5セット目。9対10で私たちのチームは負けている。立て直すためのタイムアウト。


「私がちゃんと拾うから。信じてほしい。」


そう言っても、もう誰も信じてはくれなかった。

私のところにボールが来ても、私の前に人が来る。

「オッケー」と大きな声で言っても誰の耳にも届かない。

とうとうベンチに下げられた。先生もチームメイトも何も言わなかった。

決勝の舞台はこんなにも観客席が近い。


「拾えないリベロってコートに入れておく意味ないよね。」


聞きたくなくても聞こえてくる。

ピー

25対20 私たちの中学の勝ちが、全中出場が、決まった。

ワー 

みんなの輪の中に入ることができなかった。

私はリベロなのにボールを拾っていない。私が拾えなくても勝てるチームだった。

もうやめたほうがいい。仲間に無視されるリベロってなんだ。


「本当に強いリベロは、相手からも仲間からも‘‘ここにはこいつがいる。‘‘って思わせるやつなんだ。ここにはこいつがいるから大丈夫。あすこにはあいつがいるから打ってはいけない。ってね。」


春…私には無理だ。そんなすごいリベロにはなれないよ。

私はその日を最後に全中にはいかず、バレーをやめた。

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