オリンピック期間中の番組の提供は政府になります

@HasumiChouji

オリンピック期間中の番組の提供は政府になります

「折角、我が国で開催されるオリンピックを放送出来ないそうだが……一体、どう云う事だね?」

 中止されたモノも含めて4回目となる東京五輪の1年前に、首相の前に集められたのは、地上波・衛星・ケーブル・ネットを問わず日本の大手TV局の幹部達だった。

「あの……放映権料を払えません」

「はぁっ?」

「……21世紀初頭の時点で、既に、オリンピックやFIFAワールドカップの放映権料を1社だけで支払える放送局は、日本に存在していませんでした。それから数十年経って、世界的な大規模スポーツ大会の放映権料は、当時より更に1〜2桁上がっています。今まで、ずっと、複数のTV局が割り勘で放映権料を支払っていましたが……もう限界です」

「だが……待ってくれ」

「大体、今時、オリンピックを放映しても視聴率は稼げません。視聴者の好みが、どれだけ多様化してると思ってるんですか?」


「総理……この臨時国債発行は、一体、何の為のモノですか?」

 首相は、国会で野党第一党の党首から、そう問い詰められていた。

「ですので……オリンピックの放映権料を払える放送局が無いので……代りに政府が……」

「あの……東京五輪開催の為に巨額の国債を発行しておいて……またですか?」

「で……ですが……東京五輪開催こそ国民の夢であり……」


「おい、折角、放映権を買ってやったのに、何で、どこも放送しない?」

「あの……前回も言いましたように、視聴者の好みは多様化しています。オリンピックを放送しても視聴率はそれほど取れませんので、スポンサーも付いてくれません」

「なら……」

 そう言って、首相は公共放送の会長の方を見た。

「無理です」

 続いて、衛星・ケーブル・ネット放送のスポーツ専門チャンネルの社長を見る。

「ウチも無理です」

「何でだ?」

「あの……オリンピックの開催費用の高騰と開催期間の長期化の理由を御存知ですか?」

「はぁ?」

「今、オリンピックの競技が何種目有るか御存知ですか?3つや4つの局では、朝から晩までオリンピックを放送し続けても、一部の競技しか放送出来ません」

 そして、更なる臨時国債が発行された。政府が民放にスポンサー料を払い朝から晩までオリンピックを放映させる為に。


「なるほど……償還は不可能と言わるのですね。まぁ、確かに、我が国の国家予算十年分以上の国債を一度に償還しろと云うのは無理でしょうな」

「は……はぁ……」

 日本がオリンピックの為に発行した大量の国債を買い取ったのはJOCであり……更にその金の出所は……。

 オリンピックの為の国債の償還期限が来た時、ICOは日本と云う国そのものを買い取った。

 そして、開催費用の高騰により破綻しつつ有った国際スポーツ団体は……新たなる活路を見出し、見事に復活を遂げた。

 開催国そのものを乗っ取り経済的に食い潰すと云う方法で。

 無論、これも、いつかは破綻するだろうが、その時は、その時だ。

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