このクラスに転生者がひとりいる!

ちびまるフォイ

ずっと伝えられている方法

「1年1組の担任になった君に、ひとつ頼みがあるんだよ」


「校長先生、頼みとは?」


「実は君のクラスの生徒にひとりだけ転生者がいるようだ。

 そのひとりがどうにもわからなくてね。

 担任の君なら生徒を一番見ているし、探してくれないか」


「わかりました、転生した生徒を探してみます」


担任の先生はこれまでとは違った目線を持って生徒と接することにした。


(この中に転生した生徒がひとりいるはず……)


目をこらして見ても、みんな同じ1巡目の世界に生まれた子供に見えた。

はたしてこの中に混じっている転生者を特定できるものか。


担任はまずクラスの中で一番成績がよく、それでいてろくに授業を聞いてない子供を呼び出した。


「君は……実は転生して、この世界に来たんじゃないか?」


「え? 先生、何を言ってるんですか?」


「転生したからテストも超簡単なんじゃないのかな?」


「うちは親がモグワーツ高等学校の教師で、

 家ではもっと先の部分を教えてもらっているんですよ」


「ああそう……転生者じゃないのか……」


あてが外れて担任の転生者あてはふりだしに戻った。

ふたたびクラスの生徒を眺めていると、妙に達観している生徒ひとりを見つけた。


「……こんなに遊び盛りの年齢なのに、やたら大人っぽい。これはまさか!」


担任は大人びてる生徒を呼び出して転生者かどうかを訪ねた。

生徒はぽかんとしていた。


「てんせい?」


「とぼけたってダメだ。君からは明らかに周りと違う空気感を感じる。転生者だろう?」


「まわりと違う空気感……ふふふ」


「え? なんで嬉しそうなの?」


「まあ、あんなガキっぽい奴らは群れで自分を大きく見せてるだけ。

 僕は強いからあんなふうに群れる必要がないんですよ」


どや顔で生徒は語り始めたが、担任は「こいつは転生者じゃないな」とうなだれた。

なぜなら担任にもこういう時期があったからだ。

周囲を見下して大人っぽく振る舞う自分に酔っているそんな時期が。


ふたたびクラスにいる転生者あてはゼロベースに戻ってしまった。


なんの糸口もつかめない担任は悩みに悩んで、

同僚の先生を連れ出してバーで呑んだくれるという愚痴会を開いた。


「だいたい、クラスにひとりいる転生者を見つけ出すってのがどだい無理な話なんだよぉ!」


担任は酒をあおりながら思いの丈を叫ぶ。


「俺も転生者あてろって言われたなぁ」


「え゛!?」


同僚のぽつりと漏らした言葉に担任の酔いは一気に引いた。


「お前も校長から転生者あてろって言われたの!?」


「前に担当していたクラスでね」


「で、当てられたのか!?」

「まあね」


「本当かよ!? いったいどんな魔法を使ったんだ!!」


「校長先生に会わせたとき、めっちゃ怯えるのが転生者だよ。

 俺もそれで転生者を特定できた」


「……はぁ? なんで怯えたら転生者なんだ?」


「さあ? 俺も前に同じ転生者さがしをしていた別クラスの先生から聞いただけだし。

 その人も同じ方法で転生者を当てたって話だ」


「ほんとかなぁ……」


なぜそれで当てられるのか理由はまったくわからないものの、

なんら転生者を特定できてない担任はわらにもすがる思いで試すことにした。


校長先生とお話しよう会、などとそれっぽい理由をつけては

生徒と校長のツーショットにさせてひとりひとりの様子を見ていった。


すると、中には不自然なほど校長に怯える生徒がひとりだけいた。


「まさか……転生者か……?」


体をぶるぶると震わせている生徒ひとりを特定し、校長先生に結果を報告した。


「なるほど、その子が転生者なんだね」


「はい、だと思います」


「協力ありがとう。助かったよ」


「校長先生。どうして転生者さがしって必要だったんですか?」


「前世の記憶を持っている子がいることで、困ることがあるからね」


「なるほど……」


前世の記憶をフル活用して勉強もせずに好成績を取ったりしたら、

同じクラスの生徒によくない影響があるんだなと担任は納得した。



その後、転生特定された生徒はまもなく退学となった。

退学後の行方は誰も知らなかった。




翌年、また新入生を受け持つことになった担任の先生は

転生者がクラスにいることを検知するセンサーの結果を校長に報告した。


「校長先生、どうやらまた私のクラスに転生者がまじったようです」


「では、また転生者の特定を頼むよ」


「まかせてください」


担任はまた同じ方法で校長先生に生徒ひとりひとりを会わせた。

その中で明らかに校長を怯えている生徒をひとり特定する。


「君は転生者だね? どうしてそんなに校長先生が怖いの?」


転生してきた生徒は震える口で答えた。


「先生……一度死なないと転生って、できないんですよ?」




それから数日後。

転生した生徒からのリークにより、校長の庭から大量の死体が見つかった。

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