母へ。～親不孝からの手紙

母へ

貴女の娘に生まれた。

感謝はない。

怒りもない。

ただ、そんな事があっただけ。

貴女はお姫様だ。

ちやほやされ、勝手に好かれ、微笑むだけで貢ぎ物が届く人だ。

私は姫だ。

家族を護り、戦い、背中を支え、犠牲にもなりながら生きてきた。

貴女は、グリム童話の白雪姫。

私は、敵を迎え撃つ成田姫。

私は七人の小人ではない。

私は貴女の愛らしさに魅了される王子ではない。

貴女に嫉妬する継母でも、言い寄る王子を奪おうとする悪役でもない。

自分と他人の為に、ひたすら戦ってきた人間だ。

物語が違うのだ。

勝手に役柄を変えようとしたって、綴じている本が違うのだ。

貴女の娘に生まれた。

押し付けられた感謝はない。

踏みつけられた怒りももうない。

自然の摂理で、勝手に作られ勝手に生まれた。それだけ。

私と貴女は、別の人。