第九話 作戦

「──よし、じゃあそれぞれ動いてね。」


僕が今する事は、皆の作戦を見守る事。

…まぁ骨折してるんで。

見守るために、皆に魔法をかけた。

視角共有──簡単にいうと、魔法をかけた相手の見えている世界が、僕も見えるようになる魔法だ。

ある意味チートだけど、相手が魔法をかけても良い、と思わなければかけることができない。

まぁ許可が必要ってことである。

そこはまあ、変な事に使わないようにされてるのかな?盗聴機の進化版みたいなもんだし。

あっ脱線しちゃった、話を戻そう…そして、リンさんはそういうと、寮から出て行った。皆もそれに続いて寮を出ていく。

僕はソファーに座って、体に魔力を巡らせた。

おっ見える見える!


─────────────────────


「あっ、ライティさん~?」


これは…ルーナか。

ライティは声に気付き、ルーナのもとへ行く。


「あらルーナ…さんでしたっけ、ごきげんよう。どうかした?」


「はい。ルーナです。実は、うちの寮長──リンが、いいたいことがあるらしくって…!」


ん?ルーナ、いつもよりぶりっこみたいに話してる…お願いモードだ!


「ん?リンが、私に?」


「そうなんです!『ダークとお茶しろ』って 言ってたんですが…」


「…あの方が、ですか…?」


…げっ、ライティさん嫌がってる…

ここはルーナが頑張るしかない。

頑張れ!ルーナ!


「あの、私からもお願いします~」


あ、ルーナのキラキラパワー!(イザベラ命名)

僕も一度だけ見た事がある。

ルーナはもともと顔がいい。

そして魔法を発動させ、なんかオーラを出してキラキラさせる──やつみたい。

上目遣いとか…ルーナ、なんで上手いのかな?

練習とかしてたのかな?

さぁ効果はどうだ…?


「ん''っ?!…わ、わかりました…」


…あの清楚系ライティさんが、ん''っ?!だって。ルーナエグい…


「わっ、ありがとうございます!」


最後までキラキラパワーを崩さずライティさんと別れた。


「えっ、えぇ…」


ルーナの圧勝!

おめでとうルーナ。お疲れ。


─────────────────────


次は──リンさん。

…ダークさんが見える。あぁトラウマが…

そっ、と右手の指を撫でる。


「ダーク~!」


「うるっさいな…用は何だ?」


…怖い…リンさんの顔にも少し怒りが…あぁ恐ろしい…


「うん、ライティとお茶を──」


「断る。帰る。」


…まぁそうでしょうね。そうなりますよね。

この前断ってたし…

ここはリンさんが頑張るしかない。


「えぇ?いいの~?来てくれたら…ダークにうちのリツくんあげるよ?」


…おい寮長!?

なに勝手に僕を…

…はぁ、今度こそ、許さない…

と、思っていると、


「じゃーん!リツくんのぬいぐるみ!可愛いっしょ~?」


あぁそういう事か。

安心したけど、それ絶対ダークさんひっかからないと思…


「ほしい。行く。どこだ?いつ?」


ひ、ひっかかった!?

え、なんでなんで?


「へへっダークぬいぐるみ好きだもんなっ。」


「うるさい。」


…性格とのギャップエグいですね。

まぁ…リンさんすごいです。


「えぇっとね、場所は───時間は───だよ。ちゃんと来てよね。」


「あぁ。俺は約束を破らない。」


そういうと、地面に溶けていった。


リンさんすごいです。


─────────────────────

イザベラは──

…寝てるね。まぁ大変だったらしいしね。

今回はイザベラ、眠くて作戦に参加できないらしい。

しょうがないね。夜までノート頑張ってたらしいし。

サキも同じ。薬の作業、ノートの作業も手伝っていたらしく、参加できない。


二人共、お疲れ様。


────────────────

で…僕か。

いやー緊張する。心臓バクバクいってる。

…でも、自然を意識。集中、集中。


…よし。


「いらっしゃいませ~!何名様ですか?」


「2人ですわ…」


「はーい、ではこちらの席へどうぞ!」


やっべ…ホントに来たよ…

こっそり盗聴機を付ける。

実はここのカフェ、廃墟なんだ。

そこに幻覚魔法を──ってかんじ。

リンさんはそれをず───っと魔法発動させてて店員のフリができないから僕に…っていう感じなんだよね。

ん…盗聴機、聞こえるね。


『にしても…何を話す事がある?』


『決まっているでしょう。寮の事ですわ。』


『あぁ…その事だった。』


…話してる。

普通に会話してる。

喧嘩…してない?

僕いるの?


『その事なんだが…』




『断ってもいいか?』


…だよね。

和解なんて無理か…ちょっと期待しちゃった。

よし、僕は媚薬入りの紅茶を──


「お待たせいたしました~紅茶になります!──では失礼しま…」


「ちょっと、あなた?」


「へぁっ?…な、何です…か?」


あぁ…危険危険危険…

僕の危険サイレンが鳴っている。

嫌な予感…


「ここ最近、毒殺される事件が多いらしくってね…ちょっと、毒味してもらえない?」


「えーっと…その、ここは毒なんかありませんよ?ごく普通の紅茶です。」


「…失礼なのは分かってます。でも媚薬とかでも毒ではあるし、怖いので…」


ギクッ、ば、バレてます…?

あっ、リンさんから声がする。

テレパシーっていう魔法らしいけど…


『ちょっとぐらいなら飲んで。魔力が暴走して爆発するとか言っていたけど…50/1の確率らしいし…』


『わかりました。』


『…やっぱ、やめといた方が良い…』


『大丈夫だと思います。それに、これで怪しまれても困りますし。』


『…分かった。ごめんね、リツくん。危険な目にあわせないって決めてたのに』


『もういいですよ…では。』


すると、リンさんの声が消えた。いや、声の気配が無くなった、という方が正しいか。

頭にホワーンってしてた煙が無くなった感じ。


「了解です。では──」


小さなスプーンを持ってきて、すくって飲む。

…?!


「──だ、大丈夫でした。毒はありませんでしたので。ゲホッ…」


「ねぇ本当に大丈夫だったの?汗すごいですし…顔色もとても悪いです。」


「いえ…その、この紅茶が苦手でしてね…すみません、これを飲む人の前で」


「こちらこそ無理を言ってごめんなさいね。」


いえいえと言いながら戻る。


『ねえ本当に大丈夫なの?顔色悪いよ…?!』


『…大丈夫ですよ。あ、ダークさんとライティさんの様子、見てもらえます?』


『…りょーかい。』


僕はどうしようかな。

…そうだ、この近くの人気のない森に行こう。

そしたら皆に迷惑、かからないよね。

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ファイブファイブ 赤石 理々(旧リリ) @riri-rad

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