第6話 武装探偵社 伍
とは言ッたものの、どうするかねェ。
何せ10年以上ぶりに会うンだ。
何処から何を話していいかも分かンねェ、完全な手探り状態。
かと言ッてここから離れようにもこの空気じゃア無理がある。
オレは内心困っていた。
「何で此処に……?」
「仕事だ。終わッたからもう帰るけどなァ。」
「そ、そう……なんだ。」
そう言って潤は気まずそうにオレから目を逸らす。
その煮え切らない態度に、オレの不快感が上がッた。
あぁクソ、ムカつく。
「ああ、それよりさッきお前『何で此処に』ッつッたよなァ?」
「が、はっ……!」
潤の服の胸元を掴んで持ち上げた。
苦しそうな声が出てたが関係ねェ。
それ以上にオレは苦しいンだ。
「悪りィがそりゃコッチの台詞なんだよ。何でお前がこんなトコに居ンだ?」
「っぐ……。」
「谷崎はウチの調査員だよ。それ以上の理由がいる?」
「……はァ?」
一瞬、理解できなかった。
乱歩さんが口を挟んできたのもそうだが、何と言われたかが分からなかった。
「おいおい乱歩さん。いくらオレでもその冗談は笑えねェぞ?」
「冗談じゃない。れっきとした事実だよ。」
乱歩さんは嘘をつかねェ。
それは嫌になる程分かッてる。
けど、だからこそオレは認めたくない。
お前が
こんな危ねェ場所に居ることを。
オレの代わりにナオミを守ッてやッてンじゃねェのかよ。
アイツのこと幸せにするンじゃなかッたのかよ。
「……ふゥん、成る程?」
何故か笑いが込み上げてきた。
本当に可笑しい話だ。
「クク……クハハハッ、こりゃ面白ェ!お前も異能力者だッたッてことか!」
だッてそれはオレがお前らから離れた意味が無ェッて事じゃ無ェか。
ホント、最高に笑えるぜ。
オレは右手で胸ぐらを掴んだまま、潤を引き寄せた。
必然的に互いの顔が近くなる。
オレはずッと聞きたかッたことを潤に質問した。
「なァ、教えてくれ潤。自分がバケモノになった気分をよ。」
「ッ‼︎なに、を……。」
「とぼけてンじゃねェ。忘れたなンて言わせねェぜ?」
今でも覚えている。
オレが潤達の元を離れた原因を。
お前にとッたら、たッた一言だろう。
それにどれだけオレが苦しめられたかも知らねェだろうな。
知る必要も無ェ。
「ッ、違……アレ、はッ!」
「違わねェよ馬ァ鹿。オレがお前の言葉を聞き違えたことなんてあッたかよ?」
ああ、むしゃくしゃする。
影がオレの心情に合わせてざわめいた。
……いッそコイツを、
「それ以上は辞めろ。」
「あ?」
目を向けると、福沢さんがオレを厳しい目で睨んでいた。
あー……やりすぎたな、こりゃ。
「ッチ。わーッたよ。」
仕方なく、オレは潤から手を離した。
つのる話もあッたンだがなァ。
ま、この人のお膝元で問題を起こすのは悪手でしかないから諦めるか。
取引先とは仲良くしてェからな。
「ゲホッ、ゴホッ!」
「手ェ出して悪かッた。一応姐さんに診て貰ッとけよ。ああ、あと。」
オレは出来るだけ目つきを鋭くして潤を睨んだ。
再会したところ悪ィけど、オレの都合上お前らとはあまり関われねェ。
「オレに仕事以上で構うンじゃねェ。痛ェ目見ンぞ。」
そう吐き捨てて、その場を後にする。
後ろから慌てたような声で呼び止められた気がしたが、無視した。
……あ、姐さんのとこ行かねェと。
乾いた大地に潤いを 赦那 @Garepi
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