第7話

 女の行く末を案じ、竜一の思い出にふけっているうちに、ずいぶん時間が経った。すでに墓地を抜け出てもよいくらい長い距離を歩いたのに、まだ墓地から出られない。どうしてだろう。足元だけをみて歩いていたせいか、どこかで道を間違い、いつの間にか現実の世界から離れ、四方八方地の果てまで墓石が林立する世界に迷い込んだのだろうか。このまま暗闇のなか、墓石の世界をさまよい、永遠に抜け出せないかもしれない。そんな想いが浮かんだ。

 不安になって顔をあげた。目の前に、黒々とした四角いおおきな建物が迫っていた。何だろうと不審に思い、すぐに火葬場だと気がついた。火葬場は墓地の東の端に位置している。南へ向かう通路を歩いていたはずなのに、いつの間にか東へ向かっていたらしい。合同納骨堂に突き当たって迂回するとき、二回角を曲がるところ、一回だけ曲がって東向きの通路に入ったものと思われた。墓地は東西に細長い形をしている。ということは相当な距離を歩いてきたことになる。道理でいつまでたっても墓地から出られないはずだ。

 火葬場を目にしてまた女の話を思いだした。

「この前のお客さんね。エッチが終わってこんなこというの。人の一生はね、お父ちゃんのおちんちんの先からピュッと出て始まって、焼き場の煙突からポワッと出て終わるんだよって。おかしなこというねえ。」

 その客をまねたのか、人にものを教えるような言い方をして、キャハハとまた笑った。


 今はないが、建て替え前の古い火葬場には煙突があった。煙突からはときどき煙が出ていた。子どものころ、竜一だったかほかの友だちだったか、一緒にそれを見ながら「今、人が焼かれているね。」と話したことがあった。煙突から出た薄い煙は、すぐに空の中に消えていった。


 通路の十字路に出た。右に曲がって南へ向かった。前方に、墓地の入り口に設置された街灯が黄色く光っているのが見えた。

(おわり)

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青い空に白い雲 ウーホーオーラン @828ta8428

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