ぽっかり空いた深い落とし穴のような隣人

 どこか現実離れした美貌の少年に魅了され、まるで誘われるかのように深い人生の泥沼へと転げ落ちてゆく、もうひとりの少年のお話。
 少年同士のボーイズラブです。何がすごいって、作中の美少年・稔くんのその美少年感! 現代社会の薄暗い暗部を描きながらも、どこか寓話的な雰囲気が色濃く感じられるのは、間違いなく彼の放つ異様な存在感のおかげです。
 この稔くんの妖しい魅力自体も良いのですけれど、それを主人公の晋太くんの視点を通して描いているところがなお最高でした。このだだハマりっぷりというか、はっきり体感できる耽溺具合。
 前編と後編での、稔くんの豹変ぶりが好き。正確には、彼自身が変わったというより、それを見る普太くんの問題であるところ。距離が変わったら見えるようになってしまった〝魔〟。あるいは、思い現実から逃れるため、晋太くん自身が望んで彼に見出しているもの。
 粘度と湿度の高さがたまらない、妖しくもダークなBL作品でした。まだ未熟な少年たちの、取り返しのつかない関係性が好きな人はぜひ!