②魔獣ボス【ドン・カベギワ】復活……しかし、カベギワは動けない 第三回漫遊ラスト
ドウモゥ&コウモゥを加えたガニィ・フェンリルの魔獣グループと、はぐれルググ聖騎士団の面々は、魔獣のボス『ドン・カベギワ』を探して湖上都市中央にある、寺院遺跡にやって来た。
ここまで来る途中に雑談をしていた、コウモゥと頬ハートはどこか気が合ったらしく、すっかり意気投合していた。
レンズにヒビが走り、メガネ全体に霧がかかった片メガネが、観光客で賑わう寺院の塀を指差して言った。
「魔獣反応あり、そこっ! そこに魔獣が隠れています! たぶん、いいえ! 絶対に確実に、そこにいます!」
ガニィ・フェンリルが、キショーイ星人たちに命令する。
「
「キショーイ」
塀を調べていたキショーイ星人の一人が、塀を叩くと忍者屋敷の壁のようにクルッと塀が回転して、埋め込まれた魔獣ボス『ドン・カベギワ』が現れた。
古代エジプトの壁画と、仏像のレリーフを合わせたような姿をした。
ドン・カベギワの前にひざまずく魔獣たち。
ガニィ・フェンリルが言った。
「なんという、おいたわしいお姿に……ドン・カベギワさま」
クラウンが、ガニィ・フェンリルに訊ねる。
「埋め込まれて、封印されてしまったのですか?」
「いや、ドン・カベギワさまは元々、壁に埋め込まれたお方だ……今のドン・カベギワさまは、ポーズが違う、顔は横向きではなく、腕の向きも卍のようなポーズはしていなかった……これは封印されているお姿だ」
ドン・カベギワの口から声が発せられた。
「あぽぽぽぽぽぽっ」
「なんということだ、長い間、封印されていてアポになってしまわれた……早く塀からカベギワさまの壁を取り外せ」
キショーイ星人たちが、寺院の塀からドン・カベギワの壁を取り外して立てる。
塀から外された誰も支えない壁の、ドン・カベギワは、そのまま勢いよく前方へ倒れる。
ド──ン!
「あぽぅぅぅ!」
慌てるガニィ・フェンリル。
「うわぁぁ! カベギワさま! おまえたち、支えるモノも無い壁が立っていられるはずがないだろう! 早くカベギワさまを起こせ!」
支え台で少し斜め気味に立てられた、ドン・カベギワの両側にコウモゥと、ケモノ座りをしたドウモゥが添う。
ガニィ・フェンリルが言った。
「これで、豪将アリャパンゴラァさまがいれば……宇宙魔獣が全員揃うが、どこにいるのか? アリャパンゴラァさま」
その時、湖上都市の観光をしていたクケ子たち一行の声が聞こえてきた。
「これが有名な、湖上寺院ぜら」
「壮観でありんす」
「見事なモノでござるな……向こうには横臥した女神像や、人面怪鳥ハルピィの天井絵もあったでござる」
「パンダァァ」
クケ子たちを見た、ガニィ・フェンリルは封印されて散り散りになった。仲間のアリャパンゴラァの姿を見つけると。
駆け寄ってきて言った。
「まさか、こんな偶然が……豪将アリャパンゴラァさま、オレです軽将のガニィ・フェンリルです」
「パンダァ?」
「どうしたのですか? おまえたちアリャパンゴラァさまに何をした! 洗脳か! 洗脳をしたんだな!」
「洗脳なんてしていないぜら……アリャパンゴラァは仲間ぜら」
「仲間だと?」
その時、今度はリーダー軍団と術師軍団の声が聞こえてきた。
「赤いガイコツ、その魔獣全部オレたち、リーダー軍団に渡せ。調教して従わせる」
「いいや、我ら術師軍団が術で
リーダー軍団と術師軍団から、少し離れた位置にはシドレとワオ・ンが並んで立っていた。
「あたしたちは軍団のお目付け役、介入はしない好きにやってドスドス」
対峙して言い争いをはじめる、リーダー軍団と術師軍団。
「おまえたちより、オレたちの方が魔獣を上手に操れる」
「いいや、我々の方が魔獣操作は上手い」
「じゃあ、どっちの軍団が魔獣を所有するか、アミダクジで決めるか……オレたちの方は、あの壁に埋まった魔獣はいらない」
「アミダクジ、望むところだ……我らも、あの壁魔獣はいらない」
リーダー軍団と術師軍団の会話を聞いていた、ガニィ・フェンリルがブチ切れる。
「オレたちは、アミダクジの景品じゃねぇ!」
ガニィ・フェンリルの反重力光線が、リーダー軍団と術師軍団を吹っ飛ばす。
「うぎゃあぁぁぁ!」
「ひぃぃぃぃぃぃ!」
吹っ飛ばされて空の彼方に飛んでいく二大軍団に向かって。
四つ足立ちしたドウモゥが、クジャクの飾り尾羽に似た、目の模様がある尻尾を扇状に広げて唸った。
「あらあら、お目付けする軍団が飛んでいってしまったドスドス」
シドレが深々と一礼して、シドレとワオ・ンも去っていった。
ガニィ・フェンリルがクケ子たちに言った。
「アリャパンゴラァさまが、人質にとられているようなものだから……今は、アリャパンゴラァさまを預けておく……下等生物のクセに狡猾で卑怯なヤツらだ」
「だからぁ、アリャパンゴラァは仲間だぜら」
コウモゥがガニィ・フェンリルに訊ねる。
「これから、どうするの?」
「カベギワさまが、こんな状態だから時間をかけて、元のカベギワさまに戻していかねぇとな……どこか、安全な場所はねぇかな、この世界の侵略はそれからだ」
その時、水上都市の浮き大地から、魔王城に繋がる石の門が現れた。
門の扉が開くと、水と一緒に成人女性姿の魔勇者の娘『甲骨』が、びしょ濡れ状態で出てきて、這いつくばって咳き込んだ。
「けほっ、けほっ、ゲートの扉開けるのが早すぎた、危うく水没して死ぬかと思った……けほっ」
剣鞘を腰に横向きで装着した甲骨が、立ち上がってガニィ・フェンリルに言った。
「良かったら、魔王城に来ない? 魔獣軍団を作ってもらいたんだけれど」
ガニィ・フェンリルが狼顔で一声咆哮する。
「おもしれぇ、誰だかわからねぇが……ちょうど、居場所を求めていたところだ、その申し出受けてやるぜ」
ガニィ・フェンリルがルググ聖騎士団に向かって言った。
「短い間だったが……下等生物ども元気でな、それなりに楽しかったぜ。次に会う時はオレたちは侵略者だ」
そう言って、魔獣たちは石門ゲートに消え、甲骨も魔獣に続いてゲートに入る。
ポカンと、やり取りを眺めていたレミファが言った。
「魔勇者の娘を追うぜら!」
クケ子たち一行がゲートに飛び込むと、魔王城に繋がる門も沈んで消えた。
数時間後──山の稜線に沈む夕日を草原に並び立ち、腕組みをして眺めているクケ子たち一行の姿があった。
レミファが呟く。
「また、魔勇者の娘に逃げられたぜら」
レミファの隣には、胸元にフェアリー拓実を挟んだアクヤク・レイジョー。
カキ・クケ子。
その隣にはアリャパンゴラァ。
ヌル・ヲワカ、
「しばらくは、甲骨も魔獣軍団もあの様子だと静かにしているはずぜら……第三回目の漫遊も終わりぜら、クケ子どのはアチの世界にもどってバイトぜらか?」
「そうだね……また、何かあったら異世界に呼び出して、すぐに来るから」
「頼もしい、傭兵ぜら」
レミファは、レイジョーの胸の谷間を寝床に、腕組みをして夕日を眺めている拓実を横目で見ながら。
(どうして、消滅しないぜら?)
と、首をかしげた。
三回目の異世界漫遊?〔魔獣復活編〕~おわり~
赤いガイコツ傭兵【カキ・クケ子姉ちゃん】東方地域の歩き方ガイドブック 楠本恵士 @67853-_-
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