第9話 新幹線に11時間閉じ込められた話⑨

 地震で新幹線が止まるのは仕方ない。

 安全点検をされる作業員さんも、対応されていた駅員さんたちもGWなのに、本当にお疲れさまでした、ありがとうございました以外の言葉はない。


 ただ、アナウンスがいろいろと不足していた。

 鉄道に関わる人からしたら、“しばらくお待ちください”の“しばらく”が何時間にも及ぶことは、常識なのだろう。


 新幹線が再開したからと言って、すぐに元の運行に戻るはずなどなく、あちこちで停止したり、仮に駅に停まっても降りて買い物もできないのは当たり前なのだと思う。


 しかし、新幹線に乗る人たちは、新幹線通勤をしている人でもない限り、日常的に使っているわけではない。


 紋切り型の「お客様にはご迷惑を……」を繰り返すばかりではなく、見通しのことをもっと話すべきだったと思う。


 そうすれば、喉の渇きに苦しむ人や、お腹が空いたと泣く子供たちも減らせたはずだ。

 

 私はまだ夜の内に降りられたからいいほうで、SNSを見ると、0時を過ぎても降りられない人もいたし、この後についても地元に行く在来線もないかもと嘆く人もいたし、車中泊が決定してしまった人たちもいた。


 私は11時間だったが、もっと長くかかった人たちもいるかもしれない。

 人によっては夕食抜き、飲むものも無しで、一晩越した人もいるだろう。


 繰り返しになるが、これがいつもと同じGWだったら、多くの人たちが座ることが出来ず、駅はもっと乗れない人たちで溢れ、きっとこんなものではすまなかったはずだ。

 暑いGWだったりしたら、混雑と相まって、新幹線の中で病人が出ていた恐れもある。


 あと二ヶ月で東京オリンピックが来る。

 その時に今回のような事態になったらどうなるのか。はなはだ心配だ。

 大変な時期だとは思うが、そうなった場合どうするのか、せめてアナウンスの工夫だけでもしてもらいたい。


 同じように新幹線に閉じ込められた人の中には、日本の安全管理体制が揺らいでいるのではないかという意見もあった。

 安全管理体制の変化がどうなのかはわからないが、これからも同程度の地震は起きる可能性はあるだろうし、もっと混雑した新幹線だったらどうなるのだろうと不安ではある。

 数日後にニュースを見たら、東北大学の教授が「地震活動が非常に活発ということは間違いない」と言っていたので、半年くらいの内にまた起きるかもしれない。


 これから新幹線に乗る方は必ず飲み物や食べ物をしっかり持って欲しい。

「どうせ数時間で着くんだから」と思わず、多少邪魔で重くても買っておいていただきたい。

 小さい子がいる方は小さい子のための食べ物飲み物やお菓子を。特にアレルギーのある子は適当なものをとはいかないのでしっかり準備しておくことをオススメしたい。また、遊ぶものやDVDを見るものの準備も。

 大人も連絡や情報収集のためにスマホの電源が切れないよう、充電器を旅行の時は必ず持ち歩いて欲しい。


 飲み物、食べ物、充電器、スマホ。

 これは本当に大事なので、重いから、面倒だから、どうせすぐ着くからと思わずに必ず持って乗って欲しい。


 同じことが起きたら、すぐには着かないかもしれない。

 駅に停まらなかったら、途中で買うことも出来ないかもしれない。

 これから新幹線に乗る人はぜひそれを覚えておいて欲しいとお願いして、筆を置く。(終)

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新幹線に11時間閉じ込められた話 井上みなと @inoueminato

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