長い戦いを経て魔王を倒した勇者一行。しかし討伐後、魔王が隠し持っていた恐るべき力が明らかになる。
それは「魔王はその命が終わるとき、半径30メートル以内にいる者の身体に乗り移る」というもの。
そして魔王の死の直前、魔王と同じ部屋にいたのは勇者たち4人のみ。
かくして終わったはずの戦いは思わぬ形で延長戦を迎える……。
主人公は勇者……ではなく、その仲間の一人であった何でも屋のクード。
魔王を倒した英雄から一転、魔王候補として疑われる身となった上に共に戦った仲間を疑わなければならないハードな展開……なのだが、そんな状況にもなっても元々の明るい性格のおかげで雰囲気が暗くなりすぎないというのが、彼のいいところでもありこの作品の特徴の一つ。
味方の中に潜む魔王を探すという謎解き要素がメインだが、元仲間とのバトルもたっぷりある、ミステリー×バトル×ファンタジーという一作で3度美味しい本作品。
魔王探しのエピソードは無事完結したが、作品はそれで終わったわけでもなく、その後には新たな怪事件が!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)
やっとの思いで倒した魔王。だがそれが、主人公クードたちを待ち受ける苦難の始まりだとは――というところから物語はスタートする。
倒した魔王が死に際に主人公を含む勇者パーティの誰かに知らず知らずに内に転生した事で、仲間はお互いに疑心暗鬼しながら転生した魔王の正体を探っていく。
物語はシリアスな内容だが、軽い調子の主人公クードの軽快な一人称の語り口のおかげで、とても良い塩梅に物語が進行していく。
くすりと笑える場面と、手に汗握る戦闘パートの描写が心地よく、ページをめくる手が止まらないだろう。
一体誰が魔王なのか、そして物語の結末は――ぜひともそれは、読者自らの手で読み解き、推理し、楽しんでほしい。