必要十分な言葉が簡潔にストレートに届く、すがすがしい叙景詩集です。

定型文通りに鳴けない鶯のこえが

高らかに谷戸に響く



帰れない、と思うと 帰りたくなる

会えない、と思うと 会いたくもなる

もう あまり 好きなひとも好きなものも

増やさずにいたい、などと思う



音が出る耳栓を買った

部屋の中では

かすれた声のうたばかり聴いている



     (理柚さま「ある日の日記」より「耳をふさぐ」)