過去

振り返ってみると過去はもうそこにいなかった

私が知ろうとしなかったことは

私に語る権利のないことだった


振り返ると私が連なって倒れていた

私は自らを捨てながら進み

私のことを忘れながら生きている


私の前には未来などない

この瞬間にも私はこの世界からこぼれ落ちて

私であった私になっていく


振り返ったままの姿で考えている

私が何者かになろうとする時は

私自身を殺したい時なのだ

けれども私は私の過去の姿が

どうしようもなく愛おしい


失われた私を真似ながら

私は今日も振り返っている


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【詩集】ノートの遺した傷 清水らくは @shimizurakuha

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