ヒーローの苦悩

三枝 優

矛盾

 彼の存在に気付いた人々は彼を”オーバークロック”と呼ぶ。


 時田英治。彼はスマホを改造したことによって、未来の情報を入手できるようになってしまった。

 やがて、彼は自分の街の事件を人知れず未然に解決していく。


 今夜、彼が見た未来は何か。


◇◇◇◇◇◇


「タクシーの運転手が、通りがかりのチンピラに殺される・・か・・」


 英治の持つスマホに表示されたニュース。

 街で起こる事件の多くは、火事や交通事故であり殺人事件は多くはない。なので、結構大きく取り上げられている。場所や時間も明確。


 23時32分 繁華街の近くで、タクシーの運転手が通りがかったチンピラに因縁をつけられたあげくにナイフで刺されて亡くなった。


「これだったら、以前と同じ方法で防げるかな?」


 同じ方法とは・・・犯行の直前に懐中電灯を照らし防犯ブザーで犯人の注意をそらすとともに、周囲の注目を集めるというもの。

 前回は、犯人は驚いて逃げ出した。


 そうと決まれば、準備をしなくては。


 ボストンバッグに懐中電灯や防犯ブザー。念のための金属バットを入れる。

 19時に楓さんと食事をしながら打ち合わせ予定だけど、その後でも十分間に合うはず。


 荷物の準備ができたので、待ち合わせのファミレスに向かう前にもう一度、場所と時間を確認しようとスマホを見た。



 ニュースの内容が変わっていた。



 23時32分 高校生の時田英治が通りがかりのチンピラに銃で撃たれて死亡。

 

 ・・・え?


 

 つまり、事件現場に行くと自分が死ぬってこと?

 それじゃあ・・・事件現場に行っちゃだめだ。行くのはやめよう!


 するとまた画面が変わった。


 23時32分 タクシーの運転手が通りがかったチンピラに因縁をつけられたあげくにナイフで刺されて死亡。



 画面を見る英治。


 自分が行かなければ、タクシーの運転手が死ぬ。

 自分が行けば、自分が死ぬ。


 

 では、どうしたらいいのだろう?

 スマホを見ながら必死で考える英治であった。


 果たして、英治の出した結論は・・・・?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る