旅行中と思われる主人公、ひとり行動が多いみたい。娘と一緒だったのに単独行動していて雨に降られ駆け出してしまいます。雨宿りにはいった喫茶店は二十歳の頃通っていたお店。智昭と過ごした頃の。作者はうまいこと仕掛けてきますラストでなるほどとなりましたよ。
夢を見るのは、現実が見えていないから?生活に余裕のある人の娯楽?それでも、夢をなくしたら生きていけない、と主人公は言う。夢に向かって走るから、土砂降りの雨の中を生きていくことが出来るのに。自分のせいで、好きな人をなくし、好きなものをなくし、見ていた夢もなくした。まるで人生は土砂降りかブルーノート。そう言うかのように、物語は進んでいく。それでも人がブルーノートを好むのは、また夢を見たいと思うからかもしれない。今、彼女の見ている夢は、どんな色だろう。
同じあらすじで別々の作者さんが物語を書く企画「筆致は物語を超えるか」に参加されている作品です。 色んなタイプの「初夏色ブルーノート」がありますが、本作はお題に対してストレートな物語。ストレートはより「物語の精度」が目立つと勝手に思っているのですが、本作は秀抜です。 ひとりの女性の過去と現在。それが滔々と、少し物悲しく描かれているのですが、悲しいだけでなくどこか温かい。 まさにこの物語がブルーノート、という仕上がりになっています。 素晴らしい物語を、ぜひあなたも体験してください。オススメです!