第7話

その話を聞いていた皆は疑いながらも俺の話を信じてくれた。

霊子さんの十三回忌が次の日曜日にあるという事で、お墓のあるお寺の場所を教えてもらえた。


次の日曜日、教えて貰ったお寺へ行くと、すでに近所の食堂で会った数名が到着していた。軽く会釈をし、その近くでお焼香の順番を待っていると丸坊主の男性がこちらに近付いてきた。


その男性は遺族を見つけると遺族の前で土下座をし始めた。こちらの事など気にする事もなく大声をあげて泣いている。

何度も何度も頭を地面に付けて気の毒になるほどだ。

…もしかしてあの坊主頭の男性が霊子さんをひいたのか?


遺族が坊主頭の男性に手を伸ばし、男性は立ち上がった。

男性は立ち上がってからも、何度も遺族に向って頭を下げている。

遺族から焼香場所に促されると、霊子さんの遺影を見上げた。坊主頭の男性の背中が震えながらも手を合わせ祈りを捧げているように見えた。


霊子さんの遺影が一瞬笑顔になったように見え「ありがとう」と聞こえた気がした。



帰宅すると霊子さんの姿はなくなっていた。やっぱりあれは霊子さんだったのか…


霊子さんとはこのアパートに来てからずっと一緒だったし、霊子さんがいなくてちょっぴりさみしさを感じるのであった。

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安さの理由(全7話) 樹(いつき)@作品使用時の作者名明記必須 @ituki505

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