第6話 復讐・その後
冒険者の男が一人、俯きながらぶつぶつ言っているのを眺めているとアンリが男に近づいっていった。俺には復讐を止めることはできないしトリンの復讐を止めなかった俺はその資格はないと思い、アンリを見ているとアンリは男の目の前で立ち止まると虚しそうに男を見つめていた。
「こんな・・男の為にハインは・・。」
悔しそうにアンリはナイフを握り締めるとナイフを持っている手を振り上げて一気に床に突き刺した。
「俺を・・殺さないのか?」
「・・・殺さないわ。それをしたらあなたと一緒になってしまうもの。後ろの2人は親しい人なのでしょう。」
「・・・」
「その2人からあなたを奪ったら憎しみの連鎖になってしまうもの!」
アンリは悔しそうに男を睨むと泣き出してしまった。
(アンリは強いな・・。)
(・・・そうだね、僕は抑えきれなかったから。・・尊敬しちゃうよ。)
(そうだな。俺も・・お前を止められなかったからな。)
復讐をするのは簡単だが復讐を止めるのは難しい。それなのにアンリはあんなに憎く思っている相手のことも考えて行動した。ほんとにすごいやつだよ。
「アンリ。・・・ほんとにいいのか?」
「・・はい。許してはないけど子供の前で人は殺せないですし。」
「分かった。・・よく我慢したな。」
「はい。・・」
俺はそういうとアンリの頭を撫でた。子供が大人の女性を撫でる変な光景だがアンリは嬉しそうにマモルに微笑むと俯き泣き出してしまった。気丈に振舞っても辛かったんだろうな。
「ルサ、アンリとカミラを頼む。」
「はい。お任せください。アンリさん、カミラさん馬車に行って休みましょうか。」
そういうとルサは二人の手を取り馬車の方に向かっていった。
「これからお前らはどうするんだ?」
「俺らは子供を町の孤児院に連れて行こうと思う。」
「町の孤児院も現状は変わらないと思うが。」
「そ、それは・・」
「はあ。いや、俺が面倒をみる。孤児院の院長も俺が連れて行くぞ。」
「でも!」
「いい加減にしろ!同情心か知らんがそんなもの何の役にも立たない。その結果がアンリたちだ!お前らの偽善で奪われた人もいる!もう少し考えて行動しろ!」
「う・・・」
「その助けた子供はお前らが面倒見ろ。アンリたちも自分の大切な人が殺された、間接的な原因が近くにいると心穏やかではならないだろうからな。」
「ああ。」
すると、今まで黙っていた院長が急に顔をあげた。
「じゃあ、私も近くに置けないのでは?」
「お前は子供たちの面倒をみろ。少しでも罪悪感を感じているなら残った子供を立派に育てろ。」
「はい!ヒクッ・・分かりました。」
「それじゃあ、行くぞ。外に馬車がある子供も一緒に連れて来い。ちなみに何人いるんだ?」
「4人です。1人、疫病にかかっていて・・もう長くはないとお医者様からは・・言われていて。」
「治療は何をしている?」
「え、瀉血(しゃけつ)っていう悪い血を体の外に出す治療法です。」
「瀉血(しゃけつ)だと!!」
「っ!はい。医者からは一番いい治療法だと。」
「いや、すまない。怒鳴ってしまった。」
瀉血(しゃけつ)とは、人体の血液を外部に排出させることで症状の改善を求める治療法の一つだ。中世ヨーロッパ、さらに近代のヨーロッパやアメリカ合衆国の医師たちに熱心に信じられ、さかんに行われた が、現代では医学的根拠は無かったと考えられている治療法で俺がいた世界では限定的な治療、解毒や透析治療で行われているのみだ。(透析は捨ているというよりきれいにして戻すが一番近い。)
そんな治療法じゃ助かるものも助からないな。
「その治療をすぐにやめこれを飲ませろ。」
そういって俺は解熱剤と抗生剤を元居た世界の知識を使い魔法で作って院長に渡した。彼女はそれを受け取るとすぐに隣にいる病人の子供のもとに向かった。症状を聞く限りあの2つの薬で容態は安定するはずだ。
その後、1時間ぐらいすると体の熱が落ち着いて子供が楽そうになったと院長から報告があったためすぐに出発する準備をさせてアンリたちの屋敷に戻る為に馬車を走らせた。アンリたちの屋敷に向かう道中自己紹介をお互いにして院長はノーバと名乗り疫病が広がり始めてから国からの支援もなくなりそれからあの孤児院を1人できりもりしていたと話しその関係で子供を売りあんなことになったと、泣きながらアンリたち親子に謝り、子供たちを育て終わったら好きにして下さいとアンリに言うとアンリはそれでは今後も子供たちの世話をして下さいと言ってノーバを許した。ノーバはそれを聞くとアンリたちの親子に向かって何度もごめんなさいと泣きながら謝っていた。
屋敷に着いてからはいろいろなことをやって何日、何年とあっという間に過ぎていった。
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