第5話孤児院の事情と復讐
孤児院に向かおうと身体強化魔法を使おうと思ったがアンリ親子がいるのを思い出し馬車を出し次に馬を作ろうと手を馬車に向ける。
「お待ちください。マモル様、普通の馬よりいい馬がいますので召喚しても大丈夫でしょうか?」
「ああ。危なくはないか?」
「はい。私が躾けておりますので大丈夫でございます。」
「じゃあ、頼む。」
「お任せを。」
恭しくルサが頭を下げると右手をかざして2頭の馬を呼び出した。頭に2本の角がヤギの角みたいにあり体の大きさは普通の馬の2倍ははありそうな馬がそこにいた。
「この馬は?」
「バイコーンでございます。私が魔界で飼っていたものの中で1番優秀な馬なのでぜひご活用くださいませ。」
「ああ。」
「お母さん!あのお馬さん大きいね!」
「・・・え、ええ。そ、うね!あれって確かAランクの魔獣・・。ルサさん、ほんとに安全ですよね?」
「ええ。大丈夫よ。もし何かあればすぐに言ってすぐ消すから。」
「え!う、うん。分かった。」
(おい。あの馬ってもしかして強いのか?)
(う、うん!Aランクの魔獣だからね・・ハハ・・)
(まあ、問題ないだらあれ位ならすぐ殺せる。)
(そ、そんなんだ。まあ、ルサの段階でそんな気はしてた。)
「それじゃあ、あの馬車に乗っていくぞ。早く乗れ。」
俺はアンリとルサの話が終わると馬車に乗るように促し、乗るのを見ると自分も乗りルサに馬車を出発させた。
孤児院に向かっている道中、アンリがどうしてそんなに強い力を持っているか聞いてきたのでトリンの話や2重人格であることや転生したことを話した。
「そうなんですね。辛いことを話させてしまいすみません。トリン君もごめんね。」
「辛いけどもう大丈夫だよ。気にしないで。」
笑顔で言うとトリンは心の中へ戻っていった。
「だからマモル様の心は2種類の色があるのですね。」
「ああ、トリンと俺は別人格だからな。失望したか?」
「いえ、お二人とも美しい心を持っているので失望などしていませんよ。今後とも精一杯仕えさせていただきます。」
「ああ。」
「だから、マモルさんは体と口調があっていなかったのね。トリン君の体にマモルさんがいるから。」
「ああ、元の俺は20代だからな。」
「そうなのね。」
「難しいことは分からないけどマモルとトリンの2人がいるのね。それだけは分かった。」
「カミラには難しいからそれで十分だ。」
カミラはこちらに顔を向けると笑顔で頷いた。
マモルのことを話していると森から抜けてその先に教会が見えてきた。
「あれが孤児院だな。アンリとカミラはルサの近くにいろ。ルサは二人を守ることに専念しろ。奴らの相手は俺がする。」
「でも!ハインの仇は私が!」
「機会は作るが、俺の指示には従ってもらう。」
「マモル様は嘘はつかれないかと、少しの辛抱ですよ。アンリさんだけではすぐやられてしまうだけでございます。」
「分かり、ました。」
頷くとアンリは俯き、悔しそうに手を強く握っていた。
(かわいそうだとは思うがアンリだけでは死にに行かせるようなものだからな。)
(そう思うなら直接伝えてあげればいいのに。マモルはひねくれているね。)
(うるさい。余計な事言うな。)
(はいはい。)
トリンはおかしそうに笑っていた。俺も苦笑いすると孤児院に向けて足を向けた。
孤児院に入るとそこには冒険者風の男女3人が30代ぐらいの女性に剣を向けて真ん中の男がその女性に何かを問いかけていた。
「何で子供を売ったのですか?」
「仕方なかったのよ!疫病で食べ物の値段が上がってお金がなかったの?食べ物もろくに食べれず疫病にかかる!ここに居るぐらいなら奴隷になった方がいい暮らしができるは!」
「他に方法があったはずです。」
「そんなものないわよ!!」
「国から援助をもらうとか」
「そんなこと出来るならとっくにやってるわよ。」
孤児院の院長らしい女は耐えられなくなったのか、俯き泣き出してしまった。俺は冒険者らしき人たちに眼を向けると問いかけた。
「お前らが奴隷商人を殺したやつらか?」
「ああ、奴隷商人から子供を助け出したが。」
「言い方次第か。」
「あなたたちがハインを!」
冒険者にナイフを向けて突っ込もうとしたところをルサに取り押さえられる。
「アンリさんダメですよ。マモル様はまだ何も言ってません。」
「ルサさん離して!私が!ハンスの・・グス仇を・・・あああ」
アンリはナイフを床に振り落とすとそのまま膝から崩れ落ちると泣き出してしまう。アンリには悪いがまだ待ってもらおう。すると状況についていけてなかったカミラは徐々に状況が分かり、冒険者たちに泣きそうな顔をしながら問いかけた。
「何でグス・・パパを傷つけたの?ねぇ・ヒグ何で?・・」
「そ、それは・・。」
「お前らは正義の為に子供を助けて悪を裁いたのかもしれないがその結果がこれだ。どうだ、お前らの正義のせいでこの家族から父親を奪った感想は?」
「俺は・・子供を助ける・・為に。」
冒険者の男は俯き何かをぶつぶつとつぶやきそれからしゃべらなくなった。あいつは覚悟が出来ていなかったみたいだな。誰かを助けるという事は誰かが代わりに不幸になるという事を。
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